これを酒縁と呼ばずして何とする?

少し前、勤務先の社員旅行で秋田へ行きまして、そこでお土産に秋田の酒を買ってきたことを書きました。下の写真がそれで、秋田駅からほど近い県産品プラザで買ってきました。ただし、後列の「乳頭の雫」は田沢湖畔で泊まったプラザホテル山麓荘の売店で買ったものです。

このうち前列の右端「白神のめぐみ」、同じく真ん中「雪の茅舎」は飲み終わりました。特に「白神のめぐみ」はフルーティーで飲みやすく、ハーブでも入っているかのような香りがありました。

さて昨晩、こんどは秋田市内の新政酒造のお酒「亜麻猫」をいただきました。こちらは甘いお酒です。キレのある辛口好きな方にはお薦めしませんが、口当たりがよく飲みやすいお酒を探している方にはお薦めです。

ところで、この新政。それなりに歴史のある酒蔵のようですが、少量生産にこだわっているようで、市場に大量に出回っているわけではないようです。ただ、あたしはなぜか「新政」という名前には覚えがあると言いますか、どこかで聞いたことがあるという印象を持っていました。

そんな感じを抱きつつ昨晩の晩酌でこのお酒を出していたら、母が「今度はどこのお酒飲んでるの?」と聞くので、「この前秋田へ行ったときに買ってきた新政のお酒だよ」と答えました。すると母は「ああ、新政」と言うのです。母はお酒は一滴も飲みませんが、亡夫(つまり、あたしの父)やあたしが飲むので、酒の種類などはそれなりに知っています。その母が、いかにもよく知ってそうな言い方をしたのです。

もちろん、あたしはこの時、新政の酒は初めて飲みました、いや正確に言うと秋田で飲んでいたので二度目になりますが、自宅で飲むのは初めてです。ですから、自宅に新政の酒が存在するというのも今宵が初めてのはずなのです。母は新潟出身ですから新潟の酒ならば多少の覚えもあるかもしれませんが、親戚がいるわけでもなく住んだことがあるわけでもない秋田の酒など知る由もないはずです。

それなのによく知っているような言い方だったので、「新政って知ってるの?」とあたしは聞きました。すると母が「お父さんがよく飲んでいたのよ」と言うではありませんか。少なくとも、あたしが物心ついてからの父が新政を飲んでいたような記憶はありません。更に母に聞いてみると、あたしが幼いころ、それも一歳になるかならないかというころまで住んでいたアパート、そこの大家さんは酒屋さんだったのですが、その酒屋さんが新政を扱っていたそうで、父はよく新政を飲んでいたということらしいです。

さてウェブサイトを見ますと、新政はこの数年、いや十数年、新しく生まれ変わったようです。ですから父が飲んでいたのは昨今の新政ではなく、先代のころの新政だと思います。味がどのくらい異なるのか、それとも変わらないのか、父亡き今、今回の亜麻猫を味わってもらって感想を聞くことは叶いませんが、母から思いがけずこんな話を聞き、「血は争えない」と言いますか、今回の秋田旅行で新政の見学をさせてもらったのも何かの縁、いや「酒の縁」を感じないわけにはいきません。