隔靴掻痒?

「中国共産党」論』読了。

 

少し前に『ネオ・チャイナ』を読んだばかりなので、それに比べるとあまりの視点の違いに驚きます。日本人読者がそういうところにばかり興味を持つからでしょうか、どうも権力闘争とか人間関係のドロドロばかりに関心が行きすぎているような印象を受けてしまいました。

それにしても本書の副題は「習近平の野望と民主化のシナリオ」で、『ネオ・チャイナ』の副題が「富、真実、心のよりどころを求める13億人の野望」で、同じように「野望」という単語を使っているのに前者は習近平の、後者は民衆の、という大きな射程の違いがありますね。たぶん、これがこの両書の違いを端的に表わしているのではないでしょうか?

と、腐すようなことを書きましたが、決して非難しているのではありません。やはり中国は政治の国であり、経済よりも文化よりも政治が国を動かしている面が強い国だと思いますから、本書のような分析を必要欠くべからざるものだと思います。なので、両書の違いをあたしなりに表現してみると、中国という家に対して、一級建築士よろしく外から眺め、中に入っては天井裏や床下まで潜って調べまくっているのが『「忠告共産党」論』で、その家に住んでしまっているのが『ネオ・チャイナ』という感じです。

一級建築士には一級建築士だからこその指摘・発見があり住んでいる人には気づかないところに目配りができます。もちろん住んでいるからこそわかるし知っているということも多々あって、やはり中国を見るには、いろいろな視点から眺めないとダメなんだということがわかります。

2015年9月25日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー