重版、そして著者来日

〈エクス・リブリス〉の最新刊『歩道橋の魔術師』が重版になりました。正直に告白してしまえば、「アジアものは売れるかな?」という不安もあったのですが、そんな懸念をふっしゃくする火のような売れ行きです。書店でも順調に消化され、追加注文も届いております。

なんでアジアものは売れないと不安に思っていたか、それはこのダイアリーでも何回か書いていますので贅言しませんが、それでなくとも売れないと言われる海外文学の中でもアジアものはさらに売れない、というのはあたしの勤務先の刊行物に限らず、他社の書籍を見ていても同様のようです。

とはいえ、本書に関して言えば、舞台こそ30年ほど前の台北ですが(いまだに「中華商場」の「ちゅうかしょうば」というルビに馴染めない……汗)、読み始めるとそこが海外だということを忘れてしまうような懐かしさを覚えます。「三丁目の夕日」的な味わいと言っても構わないと思いますし、昭和の香りと呼んでも差し支えないでしょう。

そんな『歩道橋の魔術師』ですが、ほぼ一ヶ月後の6月下旬、著者の呉明益さんが来日されます。いくつかイベントも予定されています。海外文学の場合、訳者によるトークイベントというのはしばしば行なわれますが、著者自身が登壇するトークイベントはなかなか実現しないものです。

日本で開かれるシンポジウムなどに海外の作家が来日することもありますが、タイミングよくその作家の新刊邦訳が出版されていなかったりして、実は出版社や書店の販売促進という面から言えば「惜しい」ことが多いのです。しかし今回は刊行から間もないタイミングでの来日です。新聞などの文化欄でも取り上げられるでしょう。「へえー、そんな作品が出ていたんだ。買ってみようかな、読んでみようかな」という読者が一人でも増えることを期待したいところです。