第二話が始まる前に

今宵、「戦う!書店ガール」の第二話が放送です。

第一話放送後、ネットでは書店員を中心に「実際はこんなじゃない」「きれいごとすぎる」といったコメントも多かったと聞きます。実際のところ、あたしが回っている書店員さん、忙しくて自宅でゆっくりテレビどころではないので、「はい、あたし熱心に見ています!」という人にはまだ逢っていません。

では、あたしの感想はといいますと、あくまで書店員ではなく、その周縁をうろうろしている出版社の営業という目から見た感想ですが……

まず、どの業界を舞台にドラマを作っても、その業界の人から見たら「あんなの嘘だ」という突っ込みどころはあるものだと思います。ですから、このドラマも実際の書店ではありえないことも散見すると思います。そもそも書店だって千差万別。毎日毎日引きも切らずに客が来る、都会のターミナルにある書店と、地方の人口も少なく、本を買う人も数えるくらいしかいないところに立地している書店では、同じ書店員とはいえ日常的にやることがまるで違うと思います。ですから、どの立場から書店の仕事を云々するのか、にもよるのではないでしょうか?

で、このドラマの舞台となっているのは東京の吉祥寺。住みたい街ナンバーワンを何年も守っている、若者から年寄りまで多くの人に愛されている街です。新宿や渋谷ほどではないにせよ、それなりに人も多く、客足の絶えない場所に立地していると言えます。ドラマでは出てきませんが、実際のジュンク堂書店吉祥寺店は2フロアある書店ですから、アルバイトも含めスタッフもそれなりの数が働いていますので、数人で回している小さな書店とはやはりいろいろ違うのではないでしょうか?

さて第一話は、いきなりサイン会。急転直下でサイン会が決まり、連絡が行き届かずタレントはわがままでやらないと言い出す始末。しかし主人公まゆゆの熱意が通じて、イベントは大成功のうちに終了。はい、できすぎですね。そんなこと書店員でなくとも言える感想です。

でも、書店でのタレントのサイン会をテーマとした場合、他にどんなシナリオが考えられるでしょうか? ファンに紛れて刃物を持った人がタレントに切りつける? そこまでいくと書店員のかつ役どころで解決できるレベルではありませんよね。もう一つ、何かトラブルが出来する、たとえば本が届かないとか、タレントが急に来られなくなるとか? うーん、どちらもやはり書店員の努力でクリアできるような問題ではなさそう。

結局はドラマのような展開がオーソドックスではありますが、一番「らしい」のではないでしょうか? ただし、金持ちのお嬢様という設定だから致し方ありませんが、まゆゆがコミックをがんがん買い込んだり、タレントのことをよく知ろうと福岡まで行ってくるなんていう金銭感覚、散財ぶり。これはちょっとなあ、と思ってしまいました。これがごくごくフツーの書店員だったら福岡へいきなり行ってくるなんて無理ですし、そうなるとどうやってタレントの心を動かしたんだろう、という気もします。

しかし、考えてみると、テレビに向かってああでもない、こうでもないと文句をつけながら見ていられるなんて、とても平和だなあと思いますし、ほのぼのとしているんじゃないかと感じます。

そして、ロケ地であるジュンク堂書店吉祥寺店は、あたしの勤務先をご贔屓にしてくれているのか、書棚が画面に映るたびにうちの本がしっかりと映り込んでいて、そんなところだけを取り上げると、とてもよいドラマだと思ってしまいます。