男はそういうもんなんだよ

ほぼ半分読了した『サリンジャーと過ごした日々』は、決してJ.D.サリンジャーの隠された一面を暴いたエピソード、というていの本ではありません。あくまで出版エージェントを舞台にした少女(24歳ならもうレディー?)の成長譚と言った方がよいかも知れません。もちろんサリンジャーは出てきますが、彼によってストーリーが展開していくわけではありません。

もちろんサリンジャーの名前もその作品名も頻出しますが……

   

閑話休題。

まだ半分くらいしか読んでいないので感想は読み終わってからにします。ちょっと目を惹く文章があったので、それについて書きます。

それは主人公の女性が同棲している彼氏と外へ食事へ行ったときのことです。二人が食事をしているお店で彼氏がじっと別の女の子を見ていたのです。用事があるからと先に帰った主人公。一時間ほど遅れて帰ってきた彼氏。そして、そこでの二人の会話です。彼氏は、世の男というものはすべて女の子を見るものだ、と開き直った言い種です。「男は女を見るのが好きなんだ」とのたまわります。「はい、はい」と気のない返事をしている主人公に対して彼氏はこう言います。

きみは、人生はおとぎ話で、男はひとりの女と恋に落ちればほかの女には見向きもしないと思っている。だけど、そりゃうそだ。(P.150)

彼女はあえて反論もしませんが、彼氏はまだまだご託を並べます。それは別によいのです。あたしが気になったのは上のセリフです。果たして、この言葉は真実でしょうか?

あたしはそうとは思いません。完全に「見向きもしない」で一人の女の人を愛せるのかと聞かれたら、「はい」とは断言しにくいかも知れませんが、それでも、あたしはそうありたいと思います。だって、あたしはやっぱりいまだに高校時代に好きだった乾さんが忘れられないですし、他の女性を好きになってしまったら、乾さんに対する思いが嘘だったと自分で証明しているような気がするのです。

こういう考えっておかしいのでしょうか?