追加しないの?(←愚痴です)

愚痴っぽいことを書きます。

父 水上勉』がよく売れています。ふだんお世話になっている書店だけでなく、全国の書店さんから注文の電話がよく入っています。正直なところ、聞いたことないような名前の書店さんからの注文もかなりあります。来週には第三刷が出来上がるのですが、それも出たと同時に品切れになりそうな勢いです。

ところで、愚痴の前に一つお断わり。本書は「ちち みずかみつとむ」と読みます。わかるからよいのですが、注文の電話ではしばしば「みなかみ」と呼んでいる書店員さんがいらっしゃいます。注文の電話であればどちらでも構いませんが、仮名で入力する店内の検索機ではどちらになっているでしょうか? 多くのお店で「みなかみ」になっているのではないかという気がします。うちからの登録は「みずかみ」ですから、わざわざあえて間違った読み方を入力してくれているお役所か機関があるようです(爆)。

で、読み方が間違っているというのが愚痴ではありません。本書の注文のことです。

ふだんうちがよく出すような海外文学の翻訳に比べ、日本人にとってこの本ははるかに取っつきやすいものだと思います。少し前に日経に著者インタビューも載り、最近の注文の入り方を見ていると地方紙などにも書評が載ったのではないかと思われるほどの勢いですが、とにかく水上勉をよく読んでいた世代を中心に、ガイブンほど売りにくい商品ではないと思っています。

ところが注文の電話やファクスは判で捺したように「客注が入ったので一冊注文します」というものばかり。どうして、せめて後もう一冊注文してお店の棚に一冊差しておこうと思っていただけないのでしょうか? 人文書とかガイブンとか、価格が高価なものであれば売れないと困る、という心配もわかります。でも、この本であれば書評効果もあり、売れる可能性は高いと思います。現に売れているわけですから。

しかし、ほとんどの書店は客注の一冊だけしか注文してくれません。「売れていますよ」というアピールが足りないのでしょうか? 告知が十分に出来ていないのでしょうか? それもあると思います。日経に載ったとはいえ、大都市を除けば日経の書評効果など、田舎の方ではほとんど皆無なのかもしれません。

でも、本が売れないと言われている業界だからこそ、ちょっとでも売り上げに繋がりそうな情報は貪欲に活用しないといけないのではないでしょうか? あたしたちが顔を出すお店では、さすがに直接会って「売れている」という情報を伝えるからなのか、「じゃあ、あと3冊追加して、もう一回平積みしてみるね」という流れになり、さらなる売り伸ばしをしてくれています。それなりの結果も出ています。

在庫を抱えるリスクは理解できますし、抱えるにはお店の規模、つまりは資金力がものを言うのもわかりますが、売れる店はますます売れ、売れない店はさっぱり売れないという二極化が進んでいるような気がします。もちろん出版社の営業として売れるように書店に対してで来ることはまだまだあるでしょうし、あたしがそれを十全にやっているのかと問われたら胸を張ることは出来ません。そんな自分を棚に上げて言わせてもらうならば、「売れる店はますます売れ、売れない店はさっぱり売れない」という上掲のセリフは「売ろうとする店はますます売れ、売ろうとしない店ではさっぱり売れない」と言い直したくなります。

「書評が出ても、昔みたいに売れないんだよね」というセリフも気持ちもよくわかりますし真実ではありますが、そんな小さなことでもつかまえて一冊でも多く売るための武器に変えていかないと売れないのではないでしょうか? 売れているお店の書店員さんは我々が持って行くちょっとした書評などの情報でもそれを積極的に活用しますし、こちらが気づいていない情報を独自に入手していたりします。

うーーん、努力したものはますます報われ、努力しないと落後していく。小泉改革というのか、新自由主義というのか、そういうものが蔓延しているのでしょうか?