本の置かれる場所

作品社の新刊『モンサント 世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業』を店頭で見かけました。

「モンサント」と聞いてもピンと来ない人が多いかも知れませんが、アメリカの大企業の名前です。遺伝子組み換え食品で有名な企業です。いや、一部の人には「悪名高き」と言った方がよいのかも知れませんが。

別にここであたしはモンサントという起業に対してどう思うのか、といったことを話題にしたいのではありません。あくまで書店営業という立場からの話です。

この本を見かけたとき、その置かれていた棚はビジネス、世界経済といった棚でした。確かにワールドワイドに展開しているモンサントに関する本ですから、置かれている場所に間違いはないと思います。

その一方、あたしの勤務先からも、モンサントをテーマにした本ではありませんが、『遺伝子組み換え食品の真実』という本を出しています。決してモンサントだけを扱った本ではなく、もう少し広く遺伝子組み換え食品の問題を論じた本です。ただ、当然のことながらモンサントという言葉は本文の中に何回も出てきますので、決して無関係な本というわけではありません。

ところが、この『遺伝子組み換え食品の真実』が『モンサント』の隣や近くに並んでいるのかと言えば、そんなことはなく、『遺伝子組み換え……』は農業のコーナーに置かれているのです。

遺伝子組み換えに関する書籍は、実は探してみると意外と数多く出ていまして、純粋に遺伝子の問題を扱っていると理工の遺伝子工学や生命工学といった棚に置かれます。品種改良などですと農業の棚に置かれますが、遺伝子組み換え食品となると農業問題といったコーナーやそのものずばり遺伝子組み換え食品といった棚に置かれることが多いです。

そして今回の『モンサント』のような、食品ではなく、それを生みだしている企業であるとか、それによって動いている世界経済といった話になるとビジネスや経済のコーナーに置かれるのです。

これはこれで、書籍の分類・整理上、書店現場としては仕方のないことだと思いますが、たぶん中規模以下の書店であれば、こんなにジャンル分けもせず、まとめて一か所に置かれているのかも知れませんが、そういう書店ではそもそもそんなに多種多様な本が遺伝子組み換え食品だけで揃っているとも思えません。やはり大型書店だからこそ、いろいろな本が入荷し、分類も細かく分かれているのでしょう。その結果、「遺伝子組み換え食品の問題」といったテーマで本を探そうとなると、上に挙げたように数か所の棚を見に行かないとならなくなる、という事態が起きるのです。

あたしは出版社の営業として、大型店でこのように同じテーマで括れそうな書籍が何か所にも分かれて置かれることはやむを得ないと思います。でも、その一方でやはりお客様目線で考えると、似たような本が近くにないというのは不便です。そもそも何か所にも分かれて置かれているなんてことにお客さんが気づいてくれるのかどうかすら心配です。

となると、ここは出しゃばりと言われるかも知れませんが、やはり出版社の営業の出番ではないかな、とも思います。別に強引に一か所に集めろと主張したいのではありません。『モンサント』のような新刊が出たときに、ちょっとミニフェアでもやってみませんか、とサジェスチョンするくらいのことしか出来ませんが……

でも、活きのいい新刊、売れそうな本が出たときに類書を集めて展開するというのは本屋の王道ですから、決しておかしな提案ではないと思うのですが。