落ち着いてはいけない!

シャルリ・エブド襲撃事件や「イスラム国」、このところイスラーム社会が注目を浴びています。それを反映するように新刊書籍もたくさん刊行されています。特に新書のような手軽なタイプの本がかなりたくさん発売されています。書店で話を聞くと、やはりあれだけの事件があった直後を中心によく売れたそうですが、最近になって少し落ち着いてきたようです。

多くの人が興味を持ち、そのような書籍を購入してくれたことは嬉しいことだと思いますが、ここへ来てちょっと落ち着いてきているというのが気になります。もちろん、あたしの勤務先から「シャルリ・エブド」関連の書籍が出るのがこれからなので、まだまだホットな話題でないと困る、という現金な理由もあります。

でも、個人的にはそれだけが理由なのではありません。フランスの風刺画の問題も、風刺画というフランスの伝統や言論の自由という側面もあれば、ヨーロッパにおけるイスラム教という問題、移民問題など、実にいろいろな問題を抱えています。「イスラム国」にしても、残虐なテロ集団という面だけでなく、どうしてあのような組織が生まれたのか、何が彼らをあのような行動に駆り立てるのか、といったもっと考えなければならない問題があります。

これまで日本は中東諸国とは友好関係を築いてきた、と言われてきましたが、実は中東諸国から友好的に思われていたのではなく、ほとんど意識されていなかったというのが実情だったのではないでしょうか。日本はキリスト教社会ではありませんから、日本と中東諸国が宗教的な対立を生むことはほとんどなかったので、その点では欧米諸国よりは好ましく思われていたかも知れませんが。

しかし、今回の件で、少なくとも安倍政権は、自分たちは欧米社会の側、キリスト教社会の側に立っていると宣言したような形になっていますので、これからは中東諸国としっかり向き合わないとならないのではないでしょうか? さらに、ここにイスラエルという国が絡んでくるから厄介です。なにはともあれ、真剣に中東について考える必要が生まれたということで、そうなると向き合うための知識を得るためには書籍が一番でしょう。このところ陸続と発売された書籍もよいですが、それらを読み終わったら、次は歴史とか文化などを深く広く知るための書籍が必要になるはずです。そうなれば、あたしの勤務先のような出版社の出番です。

書店店頭での売り上げが落ち着くのは仕方ありませんが、日本人としてこれからもこの問題について関心を抱き続けることが大事なのではないでしょうか? だとすると、書店でも大きなスペースを取っての展開、フェアは難しくても、息長くこの問題を店頭でも訴え続けていってくれたら、と切に願います。