最後のKISS

角田光代さんの『おまえじゃなきゃだめなんだ』を読み始めました。たぶん、明日には読み終わると思います。

感想は改めて書きますが、作品の一つに「最後のキス」というタイトルのものがあり、谷村有美のこの歌を思い出してしまいました(汗)。恋人とさよならすることになって、まだ寝ている彼に最後のキスをして部屋を出て行く、という歌詞の歌です。小説の方はそういうストーリーではありませんが……

さて、これは短篇連作集で、ほぼすべての作品が、もう若くはない女性たちの恋愛模様を綴っています。家庭を持って幸せに暮らす人、いまだ独身で仕事に打ち込んでいる人、あるいは新しい恋を見つけようとしている人、別れを乗り越え次の恋に向おうとしている人、さまざまです。

毎回こういう作品を読んでいて思うのは、とりあえず作品中の時間軸で主人公に現在進行形の恋人・配偶者がいるか、いないかに関係なく、すべての主人公が一度や二度は恋愛を経験しているということに対する違和感です。

いや、それなりに人生を送ってきたら恋愛の一つや二つしていて普通でしょ、という意見はわかりますし、もっともだと思います。でも、本当に世の中の人は、それなりに生きていれば、一度や二度は異性と付き合ったことがあるものなのでしょうか? そうでない人だっているのではないか、そう思います。と言うより、かく言うあたしがそうなんです。いわゆる「恋人イナイ歴=年齢」っていうやつです。

作品中で「もう何年、恋人いないのだろう」なんてセリフを読むと、あたしの場合、「ああ、それはかわいそうね」と思うよりも、「何年か前にはちゃんと恋人がいたんでしょ?」と思ってしまいます。たとえ、いま恋人がいなくたって、かつていたことがあるならいいじゃない、それで満足しなさいよ、と思っちゃうのです。世の中には生まれてこの方恋人ができたことがない人だっているのよ、それを考えたら、たとえ一時期とはいえ恋人がいたことのあるあんたは幸せじゃない、そう思うのです。

この作品中で、恋人も作らず仕事に打ち込んでいる女性が、恋愛し結婚した女性に対して、バカにし見下す感情を抱き、それが嫉妬だとその時は気づいていなかった、というような場面があります。恋人がいない人は往々にして「恋にうつつを抜かしているなんてバカのすることだ」と見下して自分が精神的に優位に立とうとする傾向があるものです。

でも、あたしはそうではありませんでした。むしろ「恋人はおろか、友達も作れないあたしって、ダメな人間なんだ、人間としてどこかおかしいんだ」と考え、見下すというよりは自分を卑下する方に奔りがちでした。たぶん、それは正しい自己分析だと思います。恐らく、あたしは人間として、どこか欠けている、何かが足りないのだと思います。