傑作か駄作か?

少し前にWOWOWで放送されていた「リング0~バースデイ~」を視ました。ずいぶん前にテレビ放映されたのを視たのか、あるいはレンタルで視たのか、それともスカパー!かWOWOWで視たのか、まるっきり覚えていませんが、視たことがあるのは確かです。

 

2000年の作品ですか、懐かしいですね。仲間由紀恵も若いし、スーちゃん、田中好子が生きていましたから。順番としては「リング」があり、「リング2」が公開され、この作品ですから、ある程度ジャパニーズ・ホラーとしての「リング・ワールド」は世間に出来上がっていたわけで、怪物・貞子がどうして生まれたのかという謎解き的な物語としてこの作品は出来たようです。それにしてもネットなどを見る限り、鈴木光司の原作では、一連の「リング」作品はホラーではなかったはず(原作小説を読んでいないのでスミマセン)。それが映画「リング」の大ヒットで一躍ホラーの代名詞のような作品になってしまったわけですから、このようなスピンオフというか、外伝的な作品、いったいどこまで原作者の意志が働いているのか、そして原作者の意志に忠実なのか、こちらとしては全くわかりません。

ストーリーとしては、貞子の母親の超能力実験に立ち会った新聞記者たちはその後次々と死んでいき、そんな死んだ記者の一人を夫に持つ、やはり新聞記者の田中好子が、夫の死の真相究明と敵討ちのために貞子を追いかけるというストーリーと、自分でも制御できない力に恐れおののき、劇団に入団するも異物として怖がられながら、効果音担当の田辺誠一との淡い恋に心をときめかす青春時代の貞子の物語がもう一つあります。

結局、伊熊平八郎の説明によれば、自分は貞子の本当の父親ではなく、化け物(映画の中では何であるか結局は明かされていないと思いますが、爬虫類、両生類的な生き物のような……、それで人間との交尾が可能なのか?)と志津子との間に産まれた子供で、最初は一人だったけれど、幼い頃に二つに分かれ、一方が可憐で美しい仲間由紀恵、もう一方が邪悪な化け物として貞子であるとされています。伊熊博士も化け物・貞子には手の打ちようもなく、薬で成長を止める(遅らせる?)くらいしか出来ないと言っていました。ですので、映画の中では子供の姿で登場します。

それにしても、化け物・貞子と暮らしてきた伊熊本人が貞子に殺されなかったのは不思議です。やはり親子の情なのでしょうか? そして伊熊博士みずからも恐怖におびえていたのであれば、またふつうの人間として成長しつつある仲間由紀恵の幸せを願うのであれば、早いうちに化け物の方を殺してしまってもよかったのではないかという気もします。たぶん、親子の情として殺すのは忍びなかったのでしょうし、たぶん殺意を抱いた途端、自分が殺される危険もあったのでしょう。

映画を見る限り、仲間由紀恵の方の貞子に特殊な能力があったのか、化け物・貞子の能力が仲間・貞子を通して発現していたのか、今一つわかりません。化け物を仕留めれば、仲間・貞子は幸せに暮らせたのか。

それにしても、貞子の力を怖がって、逆に貞子(仲間由紀恵)をボコボコにして殺してしまう高畑淳子を初めとした劇団員、ある意味で、彼らの方がよほど怖い存在ではないでしょうか? 人間手集団ヒステリーになると平気で人を殺してしまうのかと思わされます。原作者の意図は、案外こんなところにあったのかもしれません。

そして、いまや大人気の麻生久美子が出ていましたし、あたしの大好きな奥貫薫ちゃんも、貞子に最初に殺されてしまう劇団の女優役で出ていて、やっぱりかわいいなあと思いました。結局、この作品は「リング」とは別ものとして鑑賞すべき作品なのでしょうね。ネットの映画評もそういう意見が多く、傑作・駄作の評価が分かれている気がします。