種の保存

ここ数日、喉が痛くて、軽い風邪っぴき状態が続いているからなのか、変な夢を見ました。あたしが主人公なのではなく、あくまで夢の中の世界を観察しているという夢でした。

この数年、日本人の晩婚化、非婚化、そしてそれに伴う出生率の減少が話題となっています。つまりは、若者が子供を作らなくなったということなわけですが、それについて、いろいろな人が議論をしているのです。会議室でだったのか、シンポジウムのような広い会場でだったのかは覚えていませんが、とにかく学者がたくさん集まっていたようでした。

子供を作らないと言っても、あえて作らない夫婦・カップルもいるが、中には経済的に作れない人だっているし、欲しいし努力もしているけどできない人もいる、といった議論が交わされる中、これだけ子供を作らないことが問題になっているのに、なんで日本は性風俗産業が盛んなんだ、という話題も出てきて、いや、日本は世界的に見て性風俗産業が盛んなのか否か、議論はどんどん明後日の方向へ行ってしまっていました。

そんな中、また別の人が話を戻して、日本人はどうして子供を作らないのか、と改めて提起。作らないのではなく、作り方を知らないのか、といった極論まで出てきました。いや、どんな生物も、教えられなくたって子孫を残しているわけで、これに関しては教えなくたって自然と理解するものではないか、という至極もっともな意見が出されましたが、そこに疑義も呈されました。

そんな議論を聞きながら、あたしが思い出したのは、映画「青い珊瑚礁」です。

 

この映画の中で、子供だった二人は特に姓の知識もないまま成長し、でもブルック・シールズには赤ん坊が出来ます。彼女が嶋の原住民にレイプされたわけではないですから、当然二人の間の子供です。まるっきり知識がなくとも、このように子孫を作る能力というのは生物に本来的に備わっているはずだ、という意見が出される一方、現在の日本の子供に、果たしてこの本来の能力があるのだろうか、という意見が出されたわけです。

疑問を出した学者が、実験的に現在の日本の子供を使って実見をしてみようという衝撃の提案をしました。さすがに無人島に放り出すことはできないので、どこか人里離れた施設に男の子と女の子を隔離して、食べ物などはきちんと与えるとして、性的な知識が一切入らないような環境を作って生活させたら、成長した二人は教えなくとも子供を作るようになるのだろうか、という実験です。

いくらなんでも、それは人権侵害ではないか、という意見が出される中、やってみる価値はある、という賛成意見も少なからずありました。ただ、果たしてそういう環境でよいのか、という問題も提起されました。上記の映画のように、ほぼ原始的なな生活を送らざるをえなくなると、人間の欲望や衣食住という根源的なものに集中し、だからこそ種の保存という方向にも向うのだろうけど、現在の日本のように衣食住に関してはほぼ充足されていて、その他にもさまざまな娯楽があるような社会では、果たして種の保存という本能が目覚めるのだろうか、という意見です。

では、実験に参加する男の子と女の子にはフツーの生活を送ってもらうけど、性的な情報だけは一切シャットアウトしたらどうなるだろうか、という意見も出されましたが、性的情報を一切シャットアウトしたフツーの生活という実験場をどうやって構築するのか、そこで議論は紛糾です。

はい、なんでこんな夢を見てしまったのか、わかりません。特に読んでいた本、見ていたテレビでこういった話題が出ていたわけではありませんので、全くの偶然なんだと思います。あたしの潜在意識にこういう考えがあるのでしょうか? それはともかく、夢の中の学者たちの意見の中で、やはり興味深いのは「人間は教えなくても子供を作れるのかどうか」という点です。現在の社会では、なんだかんだ言ってもネットやマンガ、ドラマに映画など、セックスシーンが氾濫していて、それなりに性行為に小さいころから触れる機会はあります。あれが子供を作る行為と同じなんだと認識している子供は少ないのかも知れませんが。また、農家などで牛や馬を買っていると種付けなどがあって、体験的に子供を作るということを知る機会もあったかと思います。しかし、そういう機会をすべて遮断した場合、今の日本の子供や若者は、子供を作るという本能を持っているのか、保持しているのか、個人的には多少疑問に思えたりします。