誤用の慣用

間違った使い方ではあるけれど、多くの人が使っていて、もはやそれが一般に通用しているとき、誤用の慣用と言います。よくあるのは、ことわざの意味とか漢字の読み方などではないでしょうか。前者は、時々ニュースにもなりますが、世論調査的なものが文科省かどこかによって行なわれているのでしょうか? 「情けは人のためならず」なんてのが典型的でしょうか?

後者ですと、「消耗品」の「耗」は、ほんらい「もう」などという読み方はなく、正しくは「こう」なのですが、たぶん多くの日本人は「毛」の方に引きずられて「しょうもうひん」と読むようになってしまったのでしょう。

なんで、こんなことを取り上げるのか、と言いますと、今日の営業回りの時の、書店員さんとのちょっとした会話があったからです。

 

肉小説集』、『和菓子のアン』の著者の新刊です。読んだわけではありませんが、見た限り、別にエッチな意味はなく、純然たるお肉のお話のようです。なんで、あえてそう断わるかと言いますと、「肉」という言葉を見ると「肉欲」という言葉を思い出してしまうからです。

と書いてしまうと、あたしがただの変態に思われてしまいますので以下に弁明しますと、かつて勤務先の同僚の女性で、この「肉欲」という言葉を、「お肉が食べたい」という意味だと思っていた人がいたのです。つまり、お昼時に食事に行こうとなった場合、「今日は魚じゃなくてお肉が食べたいなあ」という意味で、「今日は肉欲が盛んなのよ」とのたまう女子でした。

おいおい、間違ってもそのセリフを世間様の前で大声では言わないでね、と祈っておりました。もちろん「肉欲」の正しい意味は調べるように忠告しましたが……

とまあ、肉という言葉を見ると、このエピソードを思い出してしまうわけです。