宮木あや子『砂子のなかより青き草』読了。
今回は平安もの。清少納言と中宮定子の物語です。事実というか、史実についてはかなり脚色が入っていると思われますので、それを云々しても仕方ないでしょう。あくまで小説ですから。
ただ、個人的には善玉・清少納言、悪玉・紫式部という構図がしっくりこなかったです。歴史の授業で知る範囲では、性格が悪いのは清少納言の方であり、いわゆる知識をひけらかす高慢ちきな女というイメージで、紫式部の方がまだ性格はよかったと言われています。これが正しいのかどうか、それこそ先入観なのかもしれませんが……。
そういう意味では、本書は定子と少納言の友情というか絆を軸にしていて、才気煥発な清少納言というイメージは結びにくいです。むしろ、本来ならこの時期にはまだ出仕していないはずの紫式部の方が策士然としていて違和感を感じます。
本作では、宮木さんの特徴(とあたしが勝手に思っている)である切なさはやや抑え気味で、切なさをもっと強調するのであれば、道長の権力掌握過程をグロテスクに描写し、そんな男性社会の前で当時の女性にはなすすべもなく、抗うこともできず、ただただ堪え忍ぶしかなかった、という感じにした方がよりいっそう効果的だったのではないかと思います。また一条天皇と定子との愛情などももっと描かれてもよかったかなあ、と思いました。
それにしても、今年は秋に三谷幸喜が清少納言と紫式部を主人公にした舞台を演出しますが、本作を中心に据えつつ舞台がかかる時期に、「女のバトル」という視点でもよいし、「平安朝の女性たち」という視点でもよいし、「宮中の女性」という視点でもよいし、何か書店でフェアがやれそうな気がしますね。