書店店頭で文庫・新書は、多くの場合、出版社ごと、レーベルごと、そして作者の五十音順に並んでいます。これはこれでわかりやすいですし、「そうだ、今月の○○文庫の新刊で読みたいのがあったなあ」という場合に見つけやすいものです。
でも、同じ作家の作品があっちの棚、こっちの棚に置かれているのは果たして読者に対して親切なのでしょうか? そう思うときもあります。特に新書などでは同じようなテーマの本が別々のレーベルから同じ月に出ることがありますが、たぶんそういうテーマに関心を持っている読者ならば両方とも買う確率は高いと思いますが、出版社やレーベルごとに置かれていると片一方に気づかない可能性も多々あるのではないでしょうか?
もちろん、新刊の時期なら「新刊コーナー」に並んでいることも多いので、多少は近くに置かれるでしょうけど、それでも新刊コーナーも出版社・レーベル別に並んでいますから、隣り合うと言うことはありません。これが一月か二月のずれで刊行されたりしたら、もう近くに置かれることもないでしょう。
と、なんでこんなことを書いているのかといいますと、つい最近刊行された『スピノザ『神学政治論』を読む』が気になるからです。ちくま学芸文庫です。
この本の隣には、この月のちくま学芸文庫が並んでいる本屋がほとんどですが、あたしなら、ちょっと前に出た光文社古典新訳文庫の『神学・政治論』を絶対隣に並べると思います。もちろん、岩波文庫版も並べるでしょう。
あたしは、「なんだ、文庫・新書担当の人、気づいていないの?」と非難したいわけではありません。これだけ直近でにスピノザの著作の本が出たのですから担当者は当然知っていると思います。が、書店の棚管理上、これらを隣に並べて置くことができないことにあえて文句を言いたいのです。
もしかすると、文庫・新書のコーナーではなく、人文書コーナーの方がいとも軽々隣に並べられるかもしれませんね。人文書コーナーなら、そもそも文庫・新書を並べていることがイレギュラーですので、レーベルごとに並べるなんて発想はないでしょうから。しかし、人文書担当の方は、こんどはこういう本が文庫で出ていることに気づかないパターンが多いのですよね。残念です。
もちろん、書店によっては文庫や新書をレーベルごとではなく、作家やテーマごとに並べているところもあります。そんな棚の管理は、現状ではかなり大変な作業であり負担増であると思いますが、それでもその方が面白いと思って、お客さんにも喜んでもらえると思って担当の方はやっているのでしょう。頭が下がります。