売れるから……

Facebookにも書きましたが、朝日新聞に、嫌中憎韓本が書店店頭を席巻しているような記事が載っていました。こういう本ばかり並べるのはどうかと思うが売れるから、という書店員のコメントも載っていましたが、「売れるから」という理由だけで本を並べていてもいいのでしょうか?

いや、資本主義社会なのだからそれでよいわけで、それが正しいのでしょう。

だったら、出版は文化だ、みたいな言説は即刻やめるべきだと思うのですが、そういう態度を選択するわけでもなく、一方で知的営為のような顔をしつつ、しっかり儲けに奔っている、そんな底の浅さが見え隠れしています。

別に書店だけを非難するつもりはありません。そもそも本を出している出版社があるわけで、それだって「売れる」というからには「読者のニーズ」というものが前提になっているはずですから、巡り巡って、結局一番悪いのは読者ということになるのでしょうか?

確かにそうでしょう。でも、やはり書店が地域の文化的な核であると言うのであれば、入荷した本をただ並べるのではなく、そこに文化の核としてのフィルターをかけてやるくらいのことはしてもよいのではないか、そう思います。ですから、思いっきり「嫌中憎韓」に偏った本ばかりを並べるというのも、その書店としての主義、主張、信条に基づくのであれば致し方ありませんが、もう少しバランスを取るような書店が増えてもよいのではないかと……

でも、フィルターをかけようにも、勝手に取次から入ってくるから、という側面もあるのでしょうね、いまの出版界には。それでは書店としては、入ってきた以上並べるしかない、ということになるでしょう。出版社もいたずらに嫌中憎韓本ばかり出していて、文化の一端を担っているという矜持はないのでしょうか、と出版社の人間として天に唾するようなことを言っているわけですが(汗)。

しかし、安倍自民党政権の右傾化などと言われますが、出版社も嫌中憎韓本ばかり出し、それらばかりを並べる書店があり、そういう本を好んで買っていく読者がいる。つまりは国民全体が右傾化しているんですよね。先日の国際会議で安倍総理が現在の日中両国を第一次大戦前の英独両国にたとえたりしていましたが、気づいたら戦前のような社会になっていた、ということになりかねない、そんな気がします。

少なくとも昨今の選挙などで示された民意を見ると翼賛化していることは紛れもない事実のような気がします。