19世紀のフランス

岩波新書の、新刊ではないのですが、つい最近、ふと購入して読み終わった『フランス史10講』がとても面白かったです。

内容としては、西洋史専攻、フランス文学やフランス哲学専攻の学生であれば当然知っていてしかるべき、という内容なのでしょうが、あたしのようにフランスについてはまるで門外漢の人間にはかなり歯応えのある内容でした。中国学専攻のあたしが、何を間違えたか西洋史の授業に紛れ込んでしまったかのような体験でした。

全体は、フランク王国から現代フランスまで、いわゆるフランスという国が現在の形になる源流から説き起こしているわけですが、ゲルマン民族の移動とか、フランス大革命、ナポレオン時代、パリ・コミューンなど、一応は世界史で聞いたような単語はそこらじゅうに散見します。が、改めてフランス史という流れの中で読んでいくと、一筋縄ではいかない内容を含んでいて、一回読んだだけでは理解できないところが多々ありました。著者は東大の先生ですから、東大だとこういうレベルで授業をしているのかな、という気もしました。

で、読んでいてわからないながらも興味を持ちつつ進めていくと、19世紀というのが、なかなかフランス史の中で面白い時代のように感じられてきました。フランス大革命を過ぎ、ナポレオン帝政、更にそれが終わって共和政とか王政とか、またまたまナポレオン三世が出てきたり、そんなことをしている間に第一次世界大戦の時代へ突入していく、大雑把につかんだのはこんな感じです。

ただ、全体的には哲学の分野ではあまりパッとしない時代だったようなんです。同書を読んだ限りでは、これだけ政治が転変すれば、それに併せて哲学思想も百家争鳴になりそうですが、あまりパッとしなかった時代のようです。でも、3月に文庫クセジュで『19世紀フランス哲学』というのが出る予定なので、どんな時代なのか教えてくれるのではないでしょうか? あと、刊行間もない弊社の新刊『革命と反動の図像学』などは大いに啓発してくれるのではないでしょうか? それに、このところまたブームが来ている感のあるトクヴィルも19世紀でしたよね?

  

うーん、やはり19世紀のフランス思想界、面白そうです。

ちなみに、文学・芸術分野では、19世紀は綺羅星のごとき名前がいくらでも挙がりますね。佐藤賢一さんの「小説フランス革命」の後のフランス史を概説した書物を、学界の方を集結して、あたしの勤務先から出せないものでしょうか? そう『フランス史10講』をもっとパワーアップさせたもので、資料的価値もあり、レファレンス本としても有用なものを!