Uブックスの近刊『ユニヴァーサル野球協会』を読んでいます。現実と妄想との境界がだんだん曖昧になるところが面白いですが、途中、こんな一節が非常に興味深かったのでご紹介します。
戦争はどの世代の人間にとっても不可欠なものらしい。民族魂を強化する一大野外劇なのだ。コラムニストが宇宙での無血戦争を強く提唱している。それには同感だが、絶対に実現できはしまい。単なる机上の論理にすぎないからだ。人々が必要としているのは戦傷者名簿であり、略奪したりされたりする占領地の広さ、戦略および報復機能を持つ仕切られた舞台セット、断ち切られたり修復されたりする物資供給および情報伝達ルート、軍艦の総トン数、そして次々に得点を重ねるみたいに貯えた死者、墜落した飛行機、捕虜だ。戦争には誰でも参加できるのに、宇宙戦争は少数の者だけに限られる。だから、戦争はいわば、月への欲情から大衆を解放するための売春宿みたいなものだ。(P.197)
別の本書は戦争小説ではありませんので、念のため。