人生だって?

往復の電車の中や書店回りの移動の時間に読んでいるUブックスの新刊『第三の警官』は、いわゆるSFというジャンルに入るのでしょうか? 奇想天外なストーリーです。

そんな作品中から、主人公が出会った盗人のことばが面白いのでご紹介します。主人公から人生について問われ、「ない方がましだ」と言いきった後のセリフです。

人生なんてものは腹の足しにはならないし、喉の渇きをいやしてくれるわけでもない。そいつをパイプにつめて一服できるといったものでもないし、雨露をしのぐ野に役立つわけでもない。一夜黒ビールを飲みあかし、激情に身を震わせながら丸裸にした人生ってやつをベッドに引きずりこんでみても、何のことはない一抱えの闇がわびしくそこにあるばかりなのだ。人生なんてものは大いなる錯誤にほかならず、それなしで済ませた方がいっそせいせいする代物だ。そう、軋むベッドとか外国産ベーコンなどと正に同類なのだ。(P.70)

こうは言っても、この盗人、それなりに人生を楽しんでいるように感じられるのですが、ここまで達観しているからこそ楽しめているのでしょうか?