中公新書『オスマン帝国』読了。長い長いオスマン帝国の歴史を簡便な一冊でまとめ上げるのは難儀なことらしく、著者が言うように、本書以外では20年近く前に講談社現代新書で刊行された『オスマン帝国』くらいではないでしょうか。
あたしの勤務先も、中東史、オスマン帝国を扱った書籍を出していますが、やはり時代やテーマを区切ったものばかりで、他社の書籍も本書のような概説はなかなか見当たりません。オスマン帝国を扱った書籍はそれなりに売れるので、やはり本書のような通史を待っていた読者は多かったのではないでしょうか?
で、本書ですが、非常にわかりやすいです。皇帝たちの年代記を縦糸に、そこに当時の政治状況や国際情勢などを横糸として絡め、各章の始めには地図もよいされていて、記述もわかりやすかったです。最後に著者も述べていましたが、各時代を同じ分量で書くようにしてあることで、門外漢には非常に読みやすく、頭に入ってきやすい内容でした。
恐らく多くの読者にとっては、オスマンの末期、列強に翻弄され崩壊していく過程が一番興味深いのかも知れませんが、それについては類書が何冊も出ていますので、やはりあたしのような専門外の人間には、どの皇帝の時代もバランスよく記述されている本書のようなタイプが、最初の一冊としてはふさわしかったと思います。