やはり不可解

昨日は、虎ノ門の台湾文化センターで『ここにいる』の原作者・王聡威さんのトークイベントでした。書籍の会場販売に行って来ました。ちなみに本日午後にも、下北沢のB&B川本三郎さんとのトークイベントがありますので、お時間がある方はどうぞ。午後3時からです。

さて、昨日のイベントは訳者の倉本さんが最初に王聡威さんと『ここにいる』を中心とした王聡威さんの作品の解説をされ、その後約1時間、王聡威さんがお話をされるという流れでした。

まず王聡威さんについては、作品ごとに作風を変え、『聯合文学』の編集長として雑誌を刷新するなど、常に新しいことに取り組んでいる方でした。今回の『ここにいる』も全編、主人公とその周辺人物の独白(証言?)のみで成り立っている作品で、納得できるような客観的事実は提示されません。すべて発言者の思い(思い込み? 偏見?)であって、真相は藪の中という印象です。

ただ、考えてみますと、王聡威さんが着想を得たという大阪の母子餓死事件もネットで検索する限り、結局親子が餓死しなければならなかった状況にどうして至ってしまったのか、わからずじまいです。続報も見つかりません。SNSの発達した現代社会は、他人から縁を切られるのではなく自分から縁を絶ってしまうことも多いようで、そうなると第三者からは接触のしようもなくなるのかもしれません。

  

大阪の事件、現在の台湾も他人事ではないようです。王聡威さんが講演の中でNHKの番組に触れていました。どうもNHKスペシャルの「無縁社会」シリーズを指しているようです。台湾でもこういう問題が増えているのでしょう。台湾は昔からのしがらみが一方で日本以上に残っていそうなので、孤独もより深刻なものになってしまうのでしょうか。

で、結論と言いますか、感想としては、王聡威さんの他の作品も読んでみたい、ということです。あと、日本ではまだ刊行されて間もないですが、台湾では本作の感想、男性読者と女性読者とでは異なる傾向があるのか、そんなところが気になりました。