船も出せず......
このところ新聞や雑誌、それにテレビでも『蟹工船』がブームになっていると伝えています。
あたしはブルジョアですから読んだことなんかないですけど(汗)、国語の時間にそのタイトルくらいは聞いたことがあります。たぶん、中学生か高校生くらいの時ですね、そんな作品の存在を知ったのは。
でも、そのくらいの年齢では「プロレタリア文学」と言われたって「何のこと?」という感想くらいしか持てません。もちろん高校生の時には、それなりにその手の知識を持っているらしきクラスメートはいましたけど、少なくとも高度経済成長も一段落、完全に戦後世代のあたしには「プロレタリア」という言葉自体が死語でした。
まあ、それがこの下流社会と言いますか、貧困社会、ワーキングプア、格差拡大の当今、改めて脚光を浴びているわけですから皮肉なものです。
『蟹工船』は船上での悲惨な労働環境、その酷使が見どころというか読みどころなわけで、それが今の悲惨な派遣労働者、非正規雇用労働者と重ね合わせられているわけですね。
そこまではわかります。実際、あたしのように安い給料とはいえ、一応は正社員である身からすると、本当のワーキングプアというのは理解できていないのかもしれませんが、この二十一世紀の世の中と小林多喜二の描く小説の世界とが、どことなくシンクロしているという解釈は理解できなくもないです。
でもでも、真実は小説より奇なり、とはよく言ったもので、先日のイカ漁船の休漁、そして7月に予定されているという日本全国の漁業組合の一斉休漁。
これでは船を出して働けるだけ、『蟹工船』の世界の方がマシではないでしょうか? どうしてこんな世の中になってしまったのでしょうか? つまり今の世の中は『蟹工船』以下ってことですよね?
コメントする