2008年5月 8日

ぐるになる

たまたまある本を読んでいて、それは古典小説といいますか、歴史小説といいますか、つまりは現代を舞台にしているのではなく歴史上のある時代を舞台にしている小説だったのですが、その登場人物のセリフに「ぐるになる」というのが出てきました。

歴史小説だって、今の人が書いた小説ですから言葉遣いは現代的であっても構わないわけですが、ちょっと引っかかりました。

この「ぐる」という言葉です。

いや、以前にも歴史小説や時代劇などで悪人どもが「ぐるになって」という表現やセリフは目にもすれば耳にもしていたのですが、実はずっと気になってました。

で、ずいぶん前のことなんですけど、どの辞典を使ったかわかりませんが、この言葉を調べたことがあるんです。

今にして思えば、その辞書(?)の解説、語釈は嘘八百だったんじゃないかと思いますが、そこにはこう書いてありました。

(英語のgroupから)仲間になる

うろ覚えです。確かこんなような説明が書いてあったのを記憶しています。「へえー、グループからぐるになるって言うんだ」と素直に納得しました。だとすると表記は「グルになる」でしょうか?

しかし、そうなると英語語源の言葉が時代劇で使われるのはおかしいですよね? 江戸時代にオランダ語起源の言葉ならわかりますが......

でも、その後もこの言葉は時代劇などでもしょっちゅう出てきましたので、今回改めて『日本国語大辞典』のオンライン版で調べてみました。詳しい説明は端折りますが、長いものがぐるぐる巻き付いてまとわりつくことから来ている言葉のようで、浄瑠璃にも出てくるれっきとした日本語起源の言葉だったのですね。

うーん、ようやく納得。それにしても「グループ」起源説ってどこで読んだのかしら?

でも、こういう語源の疑問といいますか、勝手な思い込みってありますよね?

昔感じていたのは「ままはは」。

「ママ」に「母」じゃ、「お母さん、お母さん」じゃないって思ってました。それにどうして英語のママを使うと「義理の」というような意味が発生するのかわかりませんでした。

この言葉も英語の「ママ」(←「ママ」って英語ですよね? 中国語でもママと言いますけど)なのに時代劇でよく出てくるので疑問だったんです。

これも調べたら「ママ」っていうのは「ままし」という形容詞で、漢字で書くと「継し」。意味は「義理の」ということで長年の疑問も一気に氷解! だから「ままちち(継父)」という表現もあるわけですね。

やはり辞書は引くもんだ。電子だろうと紙だろうと、引くことによって一つ利口になります。そしてもう一つの教訓は、辞書は複数種類を引くべきだと言うことです。今回の「グル」のように、時には嘘を教えられることもあります。いや、もしかしたら一説にはそういうのもあるのかもしれませんが......

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