2008年4月24日

重版しない理由

このところ、ちょっと海外小説が売れるようになってきて、それ以外にも何点か売れ行き好調による重版が続きましたが......

 

でも、全体的には重版が渋くなっています。あたしの勤務先だけでなく、他社もそうみたいです。大手も同じ感じです。書店を回っていると書店員の方々から口々に「○○社、全然重版する気がないみたいで、追加発注しても返品待ちなんですよ」と言われます。

 

たぶん、あたしんところも言われているんだと思います。売りたいのに、売れているのに、本が入ってこない、これは書店にとっては由々しき事態です。

 

どうして、こうなってしまったのかと言えば、答えは簡単。出版社はどこも返品が怖いからです。返品不可なんて出版社もありますが、たいていのところは返品可能なわけでして、そうなると、出荷した本があんまりたくさん返品されてくるようだと出版社としてはとても困ります。

 

で、どうするかと言いますと、返品が来ないようにするために出荷もしない、となるわけです。だから重版なんてもってのほか、なんです。

 

その結果どうなるか? ある程度売れている本などは大都市の大型店へ行けば、うずたかく山のように積まれています。お客さんが殺人的に殺到しない限りは、まだまだ当分は保ちそうです。でも、その反面、町の小さい本屋には1冊もその本が置いてない、という事態になるわけです。

 

ここまでは、これまでにもあった話です。問題はここから。


重版をしないで、出すだけ出して品切れにしたまんまですと、そういった町の本屋さんにお客さんが来て注文が入った時に「品切れで返品待ちなんです」とお断わりしなければならなくなります。

 

もちろん、「じゃあ、返品が戻ってくるまで待ちます」なんてやさしいお客さんもいらっしゃいますが、たいていの人は「都心の大きな本屋さんにはあんなにたくさん並んでいたんだから品切れなんてことあるわけないじゃないか!」と思うのです。当然だと思います。

 

これが一昔前であれば、自社の在庫がなくなり、書店からは割と頻繁に注文の電話やファクスが届くとなると「それ、重版だ!」となっていたのですが、この頃は大型店が増えて、そういうお店にはかなりの冊数が在庫されているので、出版社としては、そういう大型店の在庫がきちんと減っていくのを確認しないと重版の決断は下しにくくなっています。

 

それともう一つ。

 

この数年、ほんと、この五、六年だと思いますが、全国の主だった書店の実際の売り上げ情報(POSデータ)が揃うようになってきて、本当にその本が売れているのかどうか、出版社でもわかるようになったのが、重版を渋る大きな理由でもあります。

 

このPOSデータを分析すれば逆に「書店の店頭には何冊売れ残っているのか」ってこともわかりますし、データを蓄積していけば、「発売から1週間でここまで売れたんだから、一か月後には何部まで売れてるはずだ」という売り上げ予測も可能になるわけです。

 

つまり、これまではなんとなく勘に頼っていたものがデータとして扱われるようになり、よりシビアな生産管理、生産調整がされるようになったというのが現実です。

 

だったら、都心の大型店にばかり出荷しないで、少しは地方の書店や中小の書店のためにも少しは本を残しておけよ、と言われるわけでして、それはある程度やっているのですが、まだまだ十全ではないのが現状です。

 

どうぞ、お許しくださいませ。>お客さま、書店さま

 

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