2007年8月28日

「予定日はジミー・ペイジ」の既視感?

角田光代さんの新刊『予定日はジミー・ペイジ』、昨日、見本が出来てきました。なので、早速読んでしまいました。(配本は31日なので、本屋さんには土曜日が週明けには並ぶでしょう。)

ストーリーは既に新刊案内などでも紹介しているように、とある女性が妊娠し、そして出産に至るまでのマタニティ日記風小説です。別に私生児を産むとか不義の子を宿すとかっていう、おどろおどろしい物語ではありません。

ところで、妊娠を小説にするくらいですから、やはり何の悩みも矛盾も感じずに幸せいっぱいで出産まで行ってしまうと、それじゃあ小説としては成り立たないでしょうから、主人公はそれなりに悩みます。でも、だんだん子供を持つことの自覚が高まっていくわけですが、その間の紆余曲折、精神の不安定さ(というほど激しいものではないですが)など、ああ、女性って、こんなドラマを体験しながら子供を産むんだな、それじゃあ父親がどうしたって入り込めない子供との紐帯だって生まれるよなあ、なんて思います。

で、この小説、小説と書くわけですから、フィクションなんですけど、やはり角田さんの実話じゃないの(?)、というエッセイ色がビンビンに感じられます。もちろん主人公は「マキちゃん」で、その夫は「さんちゃん」ですから、架空の話、小説だっていうのはわかります。でも、やっぱり実話っぽく読めてしまいますね。『ドラママチ』と異なり今回は中央沿線が舞台という書き方はしてませんが、これが舞台が荻窪あたりだったら本当に「実話でしょ」って感じになっちゃいますよね。

さてマタニティ日記なので、本文も日記風に日付が振られています。この書き方、別に目新しいわけではないんですが、あたし的には翻訳家・岸本佐知子さんの「実録・気になる部分」を思い出してしまいました。特に妊娠の初めの頃、やはり不安定期ってことなんでしょうか、かなり偏執的になっている時期の描写(なんでも臭いをかいでみたくなる、そして嘗めてみたくなる、のあたり)が、読んでいて「なんか岸本さんのエッセイみたい」と思ってしまいました。今回の角田さんの作品、なんとなく一度読んだことがあるような錯覚を覚えたのはそのせいでしょう(爆)。

それにしても角田さんご自身は人の誕生日に相当興味があるようで、だからなのか著者略歴のところ、なんと生年だけでなく月日も書いてあります。他社刊行のの作品でも角田さんはちゃんとご自身の誕生日を日付けまで明記されているのでしょうか? ちょっと調べてみなければ、と思いました。

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