2007年3月11日

紙の辞書と電子辞書の近未来?

今朝の朝日新聞の「声」欄に、「紙の辞書」という言い方に違和感を覚えたという読者の投書が載っていました。
 
確かに、違和感とまではいかなくても、変な感じを受けなくはありません。やはり辞書ってのはずっしりと重いもの、というイメージが濃いですから。
 
紙の辞書って言うのは、その投書にもありますけど、電子の辞書(電子辞書)に対して使われているわけですが、電子辞書も最近は売り上げが伸び悩んでいるような印象を受けます。
 
確かに新聞などで時々報道されるところでは、右肩上がりで電子辞書の売り上げってのは伸びているみたいなんですが、あたしが電子辞書を扱っている書店や大学生協を回っている限りでは、やや伸び悩み、頭打ちな感じがします。ってことは、一般の電気屋さん量販店などで売り上げを伸ばしているんでしょうか?
 
この電子辞書、この春の新製品のラインナップを見ると、国語辞典がこれまでの『広辞苑』から『大辞泉』に代わっているものがほとんどです。話によると『広辞苑』のライセンス契約期間が切れたので、『広辞苑』を収録できなくなったということのようです。
 
いろいろと条件の交渉はあるのでしょうけど、契約は延長すればいいだけの話ですから、岩波書店側が電子辞書に載せるのを嫌がったんでしょうか? それとも岩波が法外な契約料を要求したのでメーカー側が登載を諦めたのでしょうか? そこまでの経緯は知りませんが、いずれにせよ、あまり話題になっていませんが、意外と重要な出来事なのではないでしょうか?
 
さて、あたしの仕事にかかわる諸外国語分野で見てみますと、この数年、韓国語も電子辞書になったとか中国語で新しい辞書が収録されたモデルが出た、といったニュースは飛び込んできましたが、仏独では特に目新しいニュースってないですね。これでは先生方の間でも学生の間でも盛り上がらないわけですよ。(←中国語は別?)
 
確かに手書き入力とか、音声が聞けるとか、そういったバージョンアップはありますが、やはり電子辞書の肝心な辞書の部分で大きな進展が見られないとつまらないですよね。
 
ところで、仏独や中国語、主要な辞典はほぼ電子化されたと言ってもいいかもしれません。もちろん人によって「まだ●●辞典が電子化されていないよ!」という意見はあろうかと思いますが、その言語を専門にやっている人出もない限り、一般の学習者のレベルで見たら、ほぼ全部電子化されたといっても過言ではないでしょう。
 
これまで辞書って言うと、十年、二十年かけて編集作業を続けた末にようやく出来上がるというイメージがありました。それがこの十年くらいは、学習辞典を中心に数年おきに改訂版を出版するような流れになっていました。仏和辞典、独和辞典などは毎年毎年、メジャーな辞典のどれかが改訂版を出していたような印象があります。
 
紙の辞書を売っている限り、もちろんそれなりに売れないとダメですが、このように数年おきに改訂版を出すようなことも可能です。それは売り上げがダイレクトに出版社に入ってくるからです。ところが電子辞書だと、出版社にはそこまでの収入は入ってきません。辞書を出し、売って売って利益を上げて次の改訂版の資金にする、というモデルが成立しなくなっているのです。
 
そうすると、現時点では電子辞書も最新の辞書を収録しているにせよ、五年後、十年後はどうなのでしょう? 紙の辞書が改訂され、それを電子辞書に収録していくというパターンが崩れてしまっているわけですから、いま収録されている辞書の改訂(バージョンアップ)ってどうなるのでしょうね?
 

コメントする