2006年8月19日

白水Uブックス研究会のフェアに思う...

既にあたしの勤務先の公式サイトにも書いてありますが、この夏好評をいただいた、そして毎日新聞の記事にまでなった「白水Uブックス研究会による白水Uブックスフェア@啓文堂書店吉祥寺店」が、こんどは横浜の有隣堂と府中の啓文堂で開催となりました。

Uブックスファンが増殖していくのは、個人的にも会社的にもとても嬉しいのですが、改めてUブックスというのは海外文学の「ハコ」なんだなあと思います。

確かに今回のフェア、必ずしも海外文学ではないものもセレクトされていますが、世間様のイメージするUブックスというのは「海外文学」というのが圧倒的のようです。

もちろん、「Uブックスといったら、ライ麦でしょう?」「Uブックスはシェイクスピア全集だよ!」という方も、相当数いると思いますが、どちらも広い意味では「海外文学」であることに変わりはありません。

最近でこそ、デカルトの『方法序説』や河口慧海の『チベット旅行記』など、ジャンルとすれば哲学・歴史、それに芸術などの作品も収録されていますが、果たしてこれがどの程度世間に認知されているのか......(@_@)。

もちろん、柴田元幸さん、須賀敦子さんといった方々のエッセイももう一つの柱ではありますが、これも世間での認知度はいかがなものなんでしょう?

こうなると、現代新書やちくま新書のように総合新書路線をとるのか、いやいやエッセイや人文・芸術分野はもうやめて純粋な海外文学路線で行くのか、実は勤務しているあたしにもわかりません(爆)。

ごくごく普通に読者の目線で考えますと、それって重要なこと(?)と思われそうですが、本屋さんでどの棚に置かれるかってことと絡みますので、意外と重要な問題です。

たいていは<海外文学>の棚の端の方に置いてあるパターンと、各社の新書と一緒に<新書>コーナーに置かれるパターンのどちらかです。後者の場合、Uブックスと文庫クセジュが仲良く並んでいることもしばしばです。

小さい書店ですと、一括して<白水社コーナー>って感じで置かれていることもありますが、それは今はおいといて

どこに置かれたって、売れてくれればいいんですが、海外文学の棚に『方法序説』や『チベット旅行記』を探しに来るお客さんがいるでしょうか? もちろん「Uブックスに入っている●●●」を探している人であれば、十分考えられますが......

一般には(少なくともあたしの本屋での本の探し方では)、なにかチベット関係の本ないかなと本屋に入り、向かう棚は世界史の中国・アジアのところ(シルクロードってのもあり?)、あるいは各国事情のアジアのコーナーってことになります。

そこで、つらつら棚を眺め、面白そうな本を手にとって数ページ見て、価格を確認して買うか否かを決める、となります。間違っても海外文学の棚に行く ことはないですね。もちろん、『チベット旅行記』がUブックスに入っているというのを知っていれば、Uブックスはどこにあるのだろう、という心づもりで本 屋に入りますけど......。

ただ、ここで思い出しました。現在『チベット旅行記』って単行本ではないんじゃなかったでしたっけ? すべて文庫だったような。そうすると、シルクロードとかアジア関係の棚の前に行っても『チベット旅行記』は見つけられないわけですよね?

もちろん、本屋によっては、文庫や新書などから関連する本を拾ってきて一緒に並べている本屋さんもありますが、ほとんどの本屋さんは文庫・新書は<文庫・新書>コーナーに置いてありますよね。

昨今は、書店内蔵書検索の機械が置いてあるので探しやすいですが、逆にあの機械のせいで、ある本を内容から考えていくつかの場所(=棚)に置くのが難しくなってしまったというのが書店員さんと話をしていて、よく聞かされる話です。

やはり、この業界、いろいろなところで過渡期なんですね。

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