2006年7月20日

日中関係

日中関係―戦後から新時代へ』読了。

中華人民共和国成立以来の日中関係の歩みをコンパクトにまとめた一書。その問題意識は昨今の日中関係の悪化の原因を探り、解決方法を見出したいというところにあります。

論調はおおむね公平で、特にどちらの国の肩を持つという感じはありませんが、それでも昨今の嫌中・反中的な日本人には中国に媚びていると映るのかもしれません。

この手の本としては比較的珍しく、最後に著者なりの解決案が提示されています。どれももっともだと思うのですが、二国間関係である以上、著者の提言 を日本側が真摯に実行したとしても中国側も同じように実行してくれるのか何の保証もありません。だからこそ、反中的な人は「まず中国が行動すべきだ」と いった論調になるのだと思います。確かに、中国にも著者の提言を実行してもらうには相当な苦労・困難がありそうですが、それをどう乗り越えるか、そこまで 著者は触れていません。

さて、象徴的な懸案事項として靖国問題があげられています。著者は現時点では外交問題になっている(つまり、一個人の心の問題ではない)と見なし、ひとまず中止すべきではないかと言っています。

その前段階として日本ではこの数年来、戦後は終わったという論調が盛んであるが、中国では逆にインターネットの普及や市場経済化などによって、以前 よりは自由に意見を表明できる社会が出現し、戦後抑えられてきた不平・不満をようやく述べることができるようになったという、日中間の意識の差をあげてい ます。

しかし、あたしなどから見ると、靖国に参拝する、しないなどにこだわっているなんて、日本だってまだまだ戦争を引きずっているとしか思えません。

ただ、あたしは一般の国民も含めてお互いに不平不満を正直に表明できるようになったというのは、実は言い時代になったと考えています。もちろんどち らにも、相手のことを知らないための誤解や、それに基づいた暴論もあります。でも、これまで長いこと「日中友好」という言葉に惑わされて、うわべだけ握手 をしてお互いのことを本当に知ろうとしてこなかった両国には、一度このくらい本音でやり合う時期があってもよいのではないかと思うのです。

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