2006年6月20日

わくらば日記

わくらば日記』読了。

構成としては、もういい歳のおばあさんが自分の子供の頃の、姉との想い出を回想する形式です。「おしん」とか「野菊の墓」もこういうスタイルだったような......

このお姉さんという人が、ちょっと特殊な能力を持っていて、そのことは母親も知らなくて、語り手である妹だけが知っている(後々、数名の人に知られてしまいますが...)秘密です。

この能力を使って難事件を解いていく、と言えばオカルトっぽい探偵小説ですが、そうではありません。ほとんど事件が犯人はわかっているのです。ただ、どうしてそんな事件を起こしてしまったのか、その心の暗部を照らし出すのに、姉の能力が発揮されるのです。

それは探偵ものと言うよりは、人の心の性のようなものを掘り下げた、ちょっぴり切なくもの悲しい物語です。

そして、このような悲劇的な事件に立ち会うことになった姉が、どこまでも心根の優しい、どんなときでも人を信じる人であることが、いっそう運命の悲しさを引き立てます。

本書は数篇の短篇からなっていて、この姉妹の家庭環境など、いくつかの疑問が徐々に明かされるようになっていますが、すべてが明らかになってはいません。また「続・わくらば日記」のようなもので、更にこの続きが描かれることになるのでしょう。

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