2006年3月10日

村上春樹の原稿流出

新聞にも載っていましたが、作家・村上春樹氏の生原稿が流出したそうですね。

発表された作品の原稿なのか未発表のものなのか、その両方があるのか、詳しく読んでいませんが、出版社から流出したようですね。

あたしも数年前まで編集部所属でしたので非常に身近な話題です。

あたしの場合どうしていたかと振り返ってみますと、著者から届いた原稿を整理し入稿し、しばらくたって印刷所から初校ゲラが出ます。そのゲラを校正 のために著者に送る時に、原稿も著者へ返送していました。もちろん原稿が全くなくなってしまうと作業に支障もあるのでコピーは手元に残しておきます が......。

なので、振り返ってみると生原稿を流出させようにも手元に残らないというのが現実でした。昨今は原稿もフロッピーやメモリーカード、あるいはメール に添付で届くことがほとんどで「手書きの生原稿」なんて方はほとんどいなくなってしまいましたが、フロッピーも返却してました(取っておくと、たまってし まい、置く場所に困るというのも理由の一つです)。

ただ、これは会社によって規定があるというわけではなく、手書きの生原稿を本が出来るまで持っている編集者もいるようですし、最終的に著者に返さない人もいるようです(著者が返してくれと言ってくるか否かにもよるのでしょうが)。

あたしの勤務先では編集者一人に一つボックスのようなものが割り当てられ、そこに作業の終わった原稿を保管していますが、これも年月がたつといっぱいになりますので、編集者それぞれが適宜処分しているようです。

処分というのも著者に返す、捨てるなど人それぞれです。あたしの勤務先にはシュレッターもありますので、場合によってはそれを使うこともあります。

さてさて、今回の村上さんの原稿の場合はどうだったのでしょう? 編集者によっては原稿やゲラを自宅へ持ち帰る人もいるようです。家でも作業をする 場合がありますから、そのことを一概に悪いとは言いません。新聞記事では村上さん担当の編集者は数年前に亡くなったとか。自宅に仕事上の書類やゲラが残っ ていて、家族があまり考えもせず古本屋や廃品回収業者にそれらの処分を任せてしまったら、今回のようなことは十分起こると考えられます。ネットでそれが高 値で売買されると事態になると故意にやっているのでしょうが、そもそも出版社なり担当編集者の手元から原稿が流出したという件については、もしあたしの想 像が正しいのなら悪意はないと思うのです(汚い紙の山の中に、まさか村上春樹さんの生原稿が混じっているとは思っていなかったでしょうから...)。

いや、わかっててやった、と穿った見方も可能でしょうが、同業者としてそれは信じたくないところです。

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