2006年3月 3日

ハルカ・エイティ

ハルカ・エイティ』読了。

回っている書店の女の子(複数)から「乙女だったら読まなきゃダメよ」と言われたので読みました。

戦前というか戦中に結婚した主人公・ハルカの一代記ですが、小説の中でハルカさんはまだ生きています。まだまだ生き続けそうです。なので半生記と言った方がよいのかも。

戦中戦後を生きてきた女性の物語、なんて言うとNHKの連続テレビ小説のような物語を想像するかもしれませんが、本書の主人公・ハルカさんの人生に はそんな劇的な物語はありません。劇的なエピソードもありません。誰の人生にも起こりそうな事柄が起こる程度で、クライマックスと言えるような場面も見当 たりません。

え、じゃあ、つまらない小説なの(?)と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。個人的に、特に何か劇的なことが起こるわけでもなく淡 々と流れていくストーリーって好きなので(例えば、中国映画「北京の想い出」なんか)、この手の物語は苦にならずに読めます。なにしろ、ハルカさん、迷う ことなく真っ直ぐに生きてる、そんな印象を受けます。迷ったり悩んだりしている場面も描かれていますが、そんな深刻な問題には描かれていません。

さてさて、ハルカさん、ちょっと変わった人っぽいです。80歳になったハルカさんは、確かに一風変わった人っぽく描かれていますが、戦中戦後を生き ている時のハルカさんは、あたしにはそれほど変わった人には思えませんでした。むしろ、その普通さがリアルな感じを与えてくれます。

先にハルカさんは真っ直ぐに生きていると書きましたが、最後まで読んでみた印象では、ハルカさんは家族にも友人にも他人にも、どことなく一定の距離 をおいているような印象を受けます。非常に親しい人に対しても、悪く言えば突き放したような目線を持っています。すべて他人事のように受け流すと言えばい いのでしょうか。なんとなく、そんな印象を受けました。そこにシンパシーを勝手に感じて読んでいたと言えるかもしれません。

登場人物の中では、後半はかなりはじけた感じですが、ハルカの姑が非常に魅力的です。一言ひとことが非常に輝いています。この人がいたからこそのハルカさんではないかと思えるほどです。いわゆる助演女優賞ですね。

この本、装丁も含めた印象としては中学生・高校生にも読めそうなのですが(あたしが子供の頃はこの程度分量の本も案外読んでたものですが...)、性的な描写が所々に出てくるので、ちょっとマズイでしょうか(笑)。v

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