2011年12月 7日

一万ページ

先日の日曜日に朝日新聞に載った「本の舞台裏」、ウェブにもアップされていますね。

画像がありますが、こういう分厚い近現代史の刊行の嚆矢は『ベルリン陥落1945』でした。懐かしいです。こちらの予想外に売れに売れ、ああいう装丁でしたのでミリタリー・ファンも少なからず注文した一冊でした。重版ができて納品されたときに、梱包がずっしりと重かったのを覚えています。

その後、ポツリポツリとこういった感じの本が出て、どれもお陰様で好評を博したからでしょうか、昨年から今年にかけて続けざまに出たような気がします。いや、気がするのではなく、実際に刊行されたのです。

売れ行きに多少の差はありますが、どれも成功と言ってよい成績ですし、なにより書評に取り上げられる率が非常に高かったです。相乗効果と言えるでしょう。

また、上下本がかなりの割合を占めますが、高価格の、それも上下本がそれなりに売れる、版を重ねることができるというのは、出版不況が叫ばれて久しいですが、あたしの勤務先だけではなく、業界全体にとっても喜ばしいことになったと思います。

こういっては手前味噌ですが、これらの高価格上下本が成功したからなのか、他社からも上下本がよく出るようになった気がします。

しかし考えてみますと、こういう本が売れたのは不景気だからかも知れません。

不景気だからこそ、本当に良い本にしかお金を払いたくない、という心理が働いたのではないでしょうか? もちろん、不景気ですから高価格と言っても上限はあるでしょう。どのくらいまで大丈夫なのか、まだ手探りですが、記事にも書いてあるように、これからもまだまだ出し続けるみたいです、担当編集者は!

ここまでの主要書目はこちらをご覧ください。

2011年12月 4日

本の舞台裏@朝日新聞

今朝の朝日新聞読書欄。

新書コーナーでは『100の地点でわかる地政学』が紹介されていました。このコーナー、比較的よく文庫クセジュを取り上げてくださいますね。なかなか書店では目立たないクセジュなので(←そもそも置いているお店が極端に少ない)、こうやって紹介していただけるのはとても嬉しいことです。

と、本来ならこれだけで十分にありがたいことなのですが、本日は読書欄の最後の最後、「本の舞台裏」というコラム欄で、あたしの勤務先の編集者の仕事が取り上げられています。ちょうど東京の八重洲ブックセンター本店でフェアが始まったところなので、それについても触れてくれています。(以前、毎日新聞でも取り上げていただきました。)

記事中では、きっかけとなったジュンク堂書店盛岡店、全点購入というエピソードのジュンク堂書店新宿店などが取り上げられ、東日本を中心にフェアをやってくれた書店が十数店あったと書いています。西日本ですと、あたしの知っている限りでは、紀伊國屋書店の梅田本店、ジュンク堂書店の西宮店でフェアをやってくださいました。

これだけ高価格、厚みのある本ばかりですから、フェアと言っても書店によって規模がかなり違いました。そのあたり、一応基本の書目はありますが、書店のフェア用スペースの大きさ、期間などに応じてフェアのボリュームをいかようにも調整するのが、あたしの勤務先のフェアのよいところではないでしょうか?

記事中には来年以降もこういった分厚い本の刊行が予告されています。そのうち「1万ページ」ではなく、地球何周分といった表現が使われるかも知れません。既に、ページをバラして全部縦に並べれば、月まで届くのではないか、といった冗談が社内でも囁かれています。

なお件の編集者、記事中ではこれらの書を「人文書」と呼んでいますが、先日書きましたように、これらの本を人文書コーナーではなく、ノンフィクションつまり文芸書コーナーで展開しているお店もあるようですね。

と、以上、朝っぱらから失礼しました。

2011年6月15日

なんかずーっと

次回の朝日新聞読書欄で『もうすぐ夏至だ』が取り上げられる模様です。ありがたいことに、ここんとこずーっと、どこかしらの新聞で取り上げられ続けている気がします。「それでもこんな売り上げにしかならないのか!」という、魂の叫びは今は封印して、朝日新聞社サイトの紹介予定書目を見ていると、『児童養護施設の子どもたち』という本が目につきました。

あたしは、特に福祉とかに興味があるわけでもなければ、こういう施設の見学などをしたことがあるわけではありません。ただ、中学の頃、学区内にそういう施設があり、各学年に数名はそこから通っているクラスメートがいたのを覚えています。

なんでそれを知ったかと言えば、今と違って個人情報保護なんて言われていない当時、学校には必ず名簿というものがあり、毎年全校生徒に配られていました。どこがよかったのか知りませんが、あたしは名簿をパラパラめくって眺めるのが好きで、特に目的もなく名簿を見ていたのです。すると、保護者の名前が同じ生徒が目についたのです。ふつうは保護者って父親か母親ですから、姓まで書いていないのに、そのクラスメートたちは、彼らとは全く異なる姓の人の名前が保護者の欄に書かれていたのです。よくよく見てみると、彼らの住所はすべて同じです。親には聞きませんでしたが、「ああ、そういう施設なのか」と中学生のあたしにも理解できました。

当時、あたしはクラスメートと仲が良かったわけではなく、むしろどちらかと言えば嫌われっ子でしたので、そのクラスメートたちが暮らす施設(なのでしょう)に行ったこともなければ、あたしの家とは学校からの方角が逆でしたので、見たこともありませんでしたから、それが本当に養護施設であったのか確かめたわけではありません。いま振り返ってみて、そのクラスメートたちが暗かったとか、どこか他のクラスメートと異なるようなところがあったようには感じられませんでした。ただ単にあたしが鈍かっただけなのかも知れませんし、それ以上にあたし自身がクラスの中で浮き上がっていたからなのかも知れません。

昨今、家庭内暴力などのせいで、ますます養護施設の存在がクローズアップされていますが、施設という言葉を聞くと、触れてはいけないと勝手に自己規制していた中学時代が思い出されます。

2011年5月 7日

書評と言えば

前もってわかっている情報で言いますと、明日の読売新聞と朝日新聞に、あたしの勤務先の書籍が紹介されます。月曜日は注文のファクスや電話がジャンジャンかかってくるといいのですが・・・・・・

ところで、こういった書評によって売れるというのは今に始まったことではないですが、ひと頃、TBS系の「王様のブランチ」で紹介されました、というのがかなり効いた、効果があったような覚えがあるのですが、最近はどうなのでしょう?

確かに、今でも書店店頭のポップや新聞広告には、<王様のブランチで紹介!>といった文句が並んでいるのを見かけますが、かつてほどの勢いと言いますか、影響力がなくなっている気がするのは、あたしの気のせいでしょうか?(単に、あたしの勤務先の本が紹介されていないだけかしら?)

あるいは、こういってはなんですが、「王様のブランチ」の人気が落ちているのでしょうか? いや、でも昔だって、それほど大人気の番組という感じではなかったはずです。なんとなく土曜日の昼間、だらだらとミルでもなくテレビをつけていると目や耳に入ってくる、といった視聴が多かったのではないでしょうか?

それとも、本コーナー担当だった筑摩書房の松田さんが辞めてから、パッとしなくなったのでしょうか? でも、実のところ、松田さんと言うよりも、世間では「優香が褒めると売れる」というジンクスというか、都市伝説もまことしやかに流れてましたけど。いや、都市伝説ではなく、実際に店頭での売れ方もそうだったのでしょう。

ただ、いずれにせよ、あの番組の視聴者層、そして優香が褒めるということから、どんな本なら反応が出やすいかというのは、一定のパターンがありそうです。うまくそれに乗った本が紹介されれば売れる、そうでなければそれほどは売れない、というだけのことかもしれません。

その傾向は、BSの週刊ブックレビューにも当てはまりますね。いや、もっと言えば旭屋日経や読売なども、紹介される本のジャンル、誰が紹介するかによって反応がずいぶんと違いますから、別段「ブランチ」だけの現象でもないんですよね。

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