2012年10月11日

単行本と文庫本

図書館では、単行本も文庫本も、あまり関係なく同じジャンル、テーマの本であれば同じ棚に並んでいることがよくあります。ところが一部の図書館やほとんどの書店では文庫と単行本は全く別の場所に置かれています。

単行本は、文芸書などは著者別だったりしますが、文庫本は完全に会社別、レーベル別に並んでいます。その方が管理がしやすい、というのはわかりますし、利用する側もその置き方に慣れてしまっているので別に不便だとか、おかしいといった感想は持たないようです。

基本的にそれでよいとは思うのですが、出版社の営業として書店を回っていると、そんな垣根を設けないで、もっと融通無碍に置いてもいいんじゃないかと思う時があります。特に人文ジャンルでは、古典的著作の翻訳はほとんどが文庫です。と言うよりも、文庫でしか読めないといった方が正確かもしれません。そういうものを概説書などと一緒に並べるというのが、単行本と文庫を完全に分けている書店ではできないというのは、ちょっともどかしい気がします。

ただ、こういう極端なものは別として、小説などの文芸書の場合、文庫を読む人はもっぱら文庫ばかり読み、単行本を読む人は文庫を交えつつも単行本を選ぶ傾向があるのではないかという気がしています。何故かと言いますと、ほんの一例ですが、アマゾンで『ピランデッロ短編集 カオス・シチリア物語』を見ますと、そこの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」の欄には、同じ出版社の本やシチリア関連の本を購入しているのが見て取れます。



ところが、ほとんど同じジャンルの本と言ってもよい『月を見つけたチャウラ: ピランデッロ短篇集』は光文社古典新訳文庫ですが、これの「こんな商品も買っています」はほぼすべてが同じ古典新訳文庫です。



速断は慎まないとなりませんが、古典新訳文庫を読む人は、この文庫シリーズを次から次へと読んでいる(買っている)ようで、あまり単行本には手を伸ばさないように思えます。

たった一つの例ですが、かなりはっきりと、わかりやすく傾向が見て取れるような気がします。

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