2012年9月 6日

本が届かない?

新刊の配本表を見ていてつくづく思います。

全国くまなく本が行き渡るのは夢のまた夢だなあ、と。

大手出版社のぶんこだと、どんな小さな書店でも、それこそ駅の売店でも売っていたりします。いや、最近はそんなことはなくて、「うちみたいに小さい店じゃ、注文したって入ってこないよ」という書店の方のぼやきも耳に入ってきます。大量に作られている(はずの)大手の文庫や新書ですらそんな状況ですから、あたしの勤務先が出している人文書だとか海外文学作品なんて、全国の書店の数から言えばほんの一握りの店舗にしか並ばないわけです。

いえいえ、たぶん「ほんの一握り」どころの話ではないですね。たぶん握ることすらできないほど少量なんだと思います、実態は。本が売れないとか、返品率を下げないと、と言われている昨今、これはどの出版社にとってもやむを得ない自衛策で、やはり確実に売れるお店にだけ出品したいと考えるのが合理的な経営判断というものです。(「新文化」に載っていたポプラ社の話はそれなりに参考になりましたけど......)

あたし個人としては、売れなければ元も子もありませんが、あたしの勤務先が出版している本は、日本全国各県に必ず一冊は届くように配本したいという理想があります。でも、部数の少ない専門書や高額商品の場合、その本が県内のどの本屋にも配本されない、なんてことはしばしばあります。そういう県が一つだけとは限りません。

事前に注文をくれれば......、とも言えますが、やはり部数が少ないものの場合、必ずしも事前の指定注文に応じられるとは限りません。もちろん応じようと努力はしていますが。

ただ、書店側としても忙しくてどんな本がこれから出るのか調べている暇がないし、ましてやその本が売れるかどうかをじっくり吟味している時間もない、という状況でしょう。これでは事前に注文するなんて無理ですし、どこからか情報を得て買いに来たお客さんによって初めてそんな本が出ていることを知る、ということになるのでしょう。

これが都会なら、大きな本屋に行けば、たぶん日本で出ている本はすべて並んでいるはずですし、それも一冊ではなく何冊も並んでいるはずです。手に取って中味を確認して、そして購入するか否かを決めることができます。

でも、上に書いたような状況では、タイトルを見て興味を持っても、どんな本なのか中味を確認するすべがないですし、いくつかの出版社は数ページの見本をウェブサイトで公開していますが、やはり実際に手に取って見るのとは異なるでしょう。見ないで注文しようものなら、多くの場合「やっぱり要りません」とはいきません。買い取らないとならなくなります。

インターネットが発達して、都会にいても地方にいても同じという意見も聞きますが、こういう状況って徐々に格差として大きな影響を後代に残ることにはならないかしら、と密かに危惧しているんです。




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