2012年9月 2日

帰省

書店営業って、別に本のセールスばっかりしているわけではありません。むしろ、あたしの場合、くだらない世間話の方が多かったりします。女子書店員とは恋バナに花が咲くこともあります(爆)。

そんな雑談の中、ある仲良しの書店員さんに「夏休み、どこか行きました?」と聞かれました。

答えは「どこにも......」です。せっかく話題を提供してもらっても、会話の広がらない営業マンで申し訳ありません(涙)。

ただ、言い訳をさせてもらいますと、あたしの家は、昔から休みのたびに家族でどこかへ旅行するという習慣がなかったので、休みだからといって出かけようという考えを今に至るまで持ち合わせていないのです。

こういうことを言うと、「田舎はないの?」と聞かれたりもしますが、父方は祖父の時に東京へ出てきているので、一応、本家筋はありますが、いまではもう行き来がありません。

母の田舎はありますが、こちらももう母の実兄は亡くなっていて、その子ども、つまりあたしのいとこの代になってしまっていますから、母も積極的に行こう、帰省しようという気にならないみたいです。いとこ間の付き合いもほとんどありませんし、没交渉になりつつあります。

というわけで、あたしは行くべき故郷を持たない身の上なのです。もちろん、父方の田舎(千葉、房総の方)にも、母方の田舎(新潟の上越)にも行ったことはあります。父方の田舎は、戦時中、父が疎開していたところでもあるので、父にとっては実家も同じで、あたしの家族は小さいころは夏休みになると遊びに行ってましたが、それもあたしが中学に入る頃までです。やはり、血が遠すぎて本当の田舎ではないので、なんとなく疎遠になっていってしまいました。

新潟は遠いと言うこともあり、法事などがない限り、滅多に行くことはなかったです。母の母が亡くなったときは葬儀もあり、その後も法事などがあって何度か行きましたが、最近はすっかりご無沙汰です。

とまあ、こういう人生を送ってくると、盆暮れの帰省をしてみたいという気持ちになる人もいるみたいですね。自分が体験したことがないから、そういうことをしてみたい、そういう気分を味わってみたい、ということなのでしょう。

でも、生憎あたしはそういう感情を持っていません。仮にあたしが若いうちに結婚したとして、その結婚相手が田舎から上京してきている人だったら、盆や暮れの帰省をするようになり、自然とそういう習慣なり考え方が養われたのではないかと思います。でも幸か不幸か、あたしは今に至るまで結婚という機会に恵まれず、その結果、結婚相手の実家に帰省するという体験もしたことがありません。こうなると、いまさら地方出身の人と結婚する気にはなれません、たぶん。

また、過去の父方なり母方なりの田舎へ行った楽しい想い出があるのかと問われれば、虫を捕ったり海に行ったりといった思い出はあります。でも、忘れられない楽しい想い出なのかと問われると、別に格段の体験だったという気はしません。むしろ、車で行くことが多かったのですが、道中の車酔いに苦しめられたという記憶の方が鮮明です。

あたしは小さい頃から乗り物酔いがひどく、乗れば必ず吐く、という具合でした。学校の遠足や修学旅行なども憂鬱な想い出しかありません気持ち悪くならずに済んだ、吐かないで帰ってこられた、というのがよい想い出になってしまうくらいの状態でした。高校の修学旅行は電車ではなく全行程バス移動だったので、それを理由に修学旅行は欠席した(=不参加だった)くらいです。

なので、あたしにとって旅行に出かけるということは、「車に酔う」という苦行でしかなかったのです。幸いにして免許が取れる大学になってからも、休みに出かけようと誘ってくるような友達ができなかったので(←くどいようですが、これは幸いでした)、休日に他人と出かけるという習慣が身につきませんでした。社会人になってからもそうです。

たぶん、夏休みにどこかへ行ったのかと聞いた書店員さんは、家族や友達、恋人と楽しい旅行やお出かけをした想い出がたくさんある人なのではないでしょうか? 人それぞれですから別に羨ましいとは思いませんが、昔取った杵柄というのか、トラウマというのか、幼少時の体験というのはその後の一生を左右するものです。

読んだ感想を書く