2012年7月26日

日本史かも?

売行き好調の『台湾海峡一九四九』ですが、次の日曜日に朝日新聞の読書欄で取り上げられることになり、さらに弾みがつきそうです。

ところで本書は、そのタイトルからもわかるとおり、国共内戦が底流としてあり、そんな自国の歴史に翻弄される人々の苦悩の歴史を描いた作品です。著者は日本で言うならば文部大臣まで務めてベストセラー作家なので、本書も書店によっては文芸コーナーの「海外ノンフィクション」に置かれrているお店も見受けられます。が、上に書いたような内容なので中国史や海外事情(中国・台湾・香港)といったコーナーに置かれる方がふさわしい本だと思います。

ところで、このタイトルからですと1949年の中華人民共和国成立に伴って、本土から台湾へ逃れてきた人々のルポルタージュという印象が強いですが、後半には太平洋戦争中の話がたくさん出てきます。台湾の人は、1945年までは日本人でした。ですので、日本人として、大陸や太平洋、東南アジアの各戦線で戦った人は大勢います。

取り上げられているエピソードの一つにラバウルの収容所の話が出てきます。その収容所では、日本人である台湾人は銃剣を構えて捕虜の監視をし、その捕虜として大陸から送られてきた中国人が多数強制労働をさせられていたのです。同じ中国人が看守と守衛に分かれ、それもみずからの意志ではなく、どうしようもない歴史の中で心ならずもそういう状況に陥ってしまっていたのです。

台湾人の悲哀とは、司馬遼太郎、李登輝なども使っていたタームだと記憶していますが、本書はまさしくそんな台湾人の悲哀を直接彼らに取材してまとめた一冊です。そして、そんな悲哀の原因を作った日本に対して、恨みがましいことは一言も述べられていませんし書かれてもいませんが、読んでいると深く鋭く突き刺さってくるものを感じます。

となると、本書は中国史ではなく、むしろ日本史の棚に置かれるべき本なのかもしれない、そんな風に感じました。

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