2012年4月16日

ノミネート外?

業界紙「新文化」の最新号が一面トップで本屋大賞の記事を載せていたと思ったら、今朝の朝日新聞にも本屋大賞の記事が載っていました。二つの記事の温度差はありますが、両方を読んで感じるのは、本屋大賞が曲がり角に来ているのではないかということです。

どちらにも本屋大賞に対する批判的な論調が載っています。別に今年に始まったことではなく、この数年、本屋大賞には記事で書かれていたような批判はついて回っていました。あたしが回っている書店員の中にも本屋大賞に批判的な書店員さんは何人もいます。

書店員が批判的なのは、「だったら自分は自分なりに少しでもお客さんに本を買ってもらえるように頑張るから」ということで、それはそれで一つの見解だと思います。むしろ、そうやってアンチ本屋大賞でも、「本を売りたい」「面白い本を読んで欲しい」という方向性では同じですから。

むしろ、あたしとしては、この出版不景気に、少しでも本を売ろうと頑張っているのに、それに水を差すようなことを、同じ業界の人間がやるのはいかがなものかと思うのです。批判も建設的なもの、より広く売れるための提言的なものであればよいと思いますが、そうでなければあえて言わなくてもいいでしょう、と思います。

ただ、「本屋さんが売りたい」って言うけれど、一応は日本の小説に限定していて、今年から翻訳小説も始まりましたが、売りたい本って文芸書だけじゃないよね、というのは始まったときから言われていたことで、9年やってきてようやく翻訳小説にも手を伸ばすことができるようになったと、あたしは褒めてあげたいと思うのですが......

ところで、本屋大賞はとりあえずノミネートの10作品を選び、書店店頭でもその10作品を大々的に売っているようです。それで確かにこの10作品については売り上げが伸びているのでしょうが、それ以外の本はどうでしょう? もちろん本屋大賞がなければ、この10作品だってここまで売れることはなかったわけですから、これはこれで十分な本屋大賞効果だとは思います。

でも、やはりこの出版不況を脱するには、注目されている本、スポットライトが当たっている本以外をいかに売るかということを考えないとならないのではないでしょうか? その意味で、アンチな意見が出るまでに成長した本屋大賞は、今回始まった翻訳小説部門から他のジャンルにも対象を広げるのもありだと思いますが、ノミネート10作遺品以外をどうやってさらに売っていくのか、せっかく本屋大賞効果でお店に本を買いに来ている人が増えているのに、ノミネート作だけを買って帰すなんてもったいない、なんとかそういう人たちに、ノミネート外の本を買ってもらえるような工夫をしなければ、と思います。

それは、個々の書店で個々の書店員さんが取り組むことなのでしょうけど、出版社としてはどういうサポートができるのでしょうか?

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