2012年3月12日

リアル書店の力?

昨日の朝日新聞読書欄のコラムに、リブロ池袋本店と福岡天神店で行なわれているフェアのことが載っていました。題して

3.11以後の本と私たち 未来を拓く本の力

著名人が3・11以後に読んだ本の中から心に残ったものを集めたフェアだそうで、単なる3・11フェアとは一線を画すフェアだと思います。朝日の記事では、リアル書店ならではの試みであるかのように書いてありましたが、確かにネット書店で「3・11」や「震災」をキーワードに検索すれば、もっと多くの本がヒットするでしょうし、中には思いもかけないものも混じっていると思います。でも、例えばアマゾンで検索して、500点近い本がヒットしたとして、ウェブのページをどれくらいスクロールしたり、移動したりすれば、そのすべてを見られるでしょう?

その点、リアル書店の場合は、そこにずらっと並べてあるだけで、それなりにすべて目に入りますし、全体を見渡すことができます。ただ、今回のリブロのフェアの場合、そうではなく、単に「震災」で検索したのではヒットしないような本が並んでいるところにフェアの面白さ、特長があるわけで、そこがリアル書店ならではというところなのでしょう。

でも、この記事を読んだときに、「やっぱり、ネットよりも本屋さんの方が面白いことできるよなあ」と思うと共に、これだけの著名人に連絡を取り、本を推薦してもらうというのは、かなり手間暇のかかる作業だろうなとも思いました。現地未確認なのですが、もしコメントももらっているのだとしたら、さらに手間も時間もかかっていますよね。

そして思うのは、ネット書店に対して、リアル書店はここまで手間をかけないと、人に来てもらえなくなっているのか、ということです。恐らく、こういう記事も出たのでこのフェアは話題にもなるでしょうし、集客にも貢献するでしょう。そしてなにより売り上げにも直結することと思います。

ただ、これだけの手間をかけて、ようやくそういう状況では、書店としては割に合わないのではないかという気もしました。リブロだから、それだけの手間暇や人員を割けたのであって、他の中小書店では、日常業務で手一杯で、とてもそんな余裕はないのではないでしょうか? それに、こういったフェアを切らすことなく次から次へと企画し実行するのは、リブロといえどもかなりしんどいのではないでしょうか。

そこまでしてやっと話題にもなり、お客さんが集まり、売り上げも上がる。書店の醍醐味である反面、それをいまの書店の状況で期待するのは、出版社としてはとても心苦しくも思います。もちろん「こういうフェア、やりたいんだ!」という声にはできる限り答えたいと思っていますが。

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