2012年2月16日

世界とはアメリカのことか?

文春新書『日中もし戦わば』読了。

日米中の論客が集まったと言っても、どこまで本音で語り合えるのかという点ではそれほど期待していなかったので、内容的に不満はありませんし、これはこれで面白い本だったと思います。

あたしが本書を読んで感じたのは二点です。

まず、歴史的な経緯から中国が過剰に軍事力を強化し、「他国に二度と舐められるような国にはならない」と意気込んでいるのは理解できますが、それと同時に「アメリカはいざとなったら本当に軍隊を出動させる国だ」と思い込んでいるということです。

さまざま理由はあるでしょうし、その時々の国際情勢もありますが、確かに朝鮮、ベトナム、アフガン、イラクとアメリカはいざとなったら実際に軍隊を出す国であり、こういった現代史の事実を見る限り、中国よりははるかに好戦的な国だと思います。

最近の日本は中国の不透明な軍拡路線に不安を抱いていますが、たぶん上に書いたようなことから中国は「次は我が身」と身構えていて、それが昨今の軍事行動(?)に繋がっているのだと思います。しかし、客観的に見れば他国の軍隊を国内に駐留させながら(しかも手厚い予算も与えて!)信頼関係を築いている日米なのですから、中国とも信頼関係が築けないはずはないと、中国学を学んできたあたしとしては信じたいところです。

もう一点は、本書の中で触れられていましたが、欧米諸国は盛んに中国の民主化を求めていますが、果たしてそれが好結果を生むのかどうかという懐疑です。

現状の愛国教育にならされた中国国民が民主的権利を手に入れ、民主的選挙の結果、彼らの指示を受けた政党が政権を取った場合、多分に日本や海外に対して好戦的になる可能性が高いという指摘はうなずけます。むしろ、強健で民意を押さえ込み、なんとか国際社会と協調しようとしている現在の共産党独裁政権の方がマシなのではないかというのは十分な説得力を持つと思われます。

ただ、民主化というのは単に選挙権が与えられると言うことだけではないはずです。さまざまな情報が世界から入ってきて、それを自分なりに判断することが求められるはずですから、本当に民主化したら、現在の狭量なナショナリズムは退潮に向かうのではないでしょうか。

そういう射程で考えた場合には、やはり欧米諸国が求めるような民主主義へ向かうのは必然であり、最終的には好ましい結果を生むと思います。

それにしても中国というのは、グローバリズムとか世界標準というのは「アメリカの価値基準に合わせること」と思い込んでいるのでしょう。日本は「はい、それに従います」としっぽを巻いてTPPにも参加するみたいですが、中国は異を唱えているわけですね。イスラム勢力ではないですが、時々スカッとした気持ちになるのも事実です。

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