2012年2月 9日

検索する前に

営業で書店を回っていて、書店の人と話をしていても、いろいろなお客様の問い合わせが割り込んできます。「割り込み」とは人聞きが悪いですね。あくまで書店も出版社も本を買ってくれるお客様あっての商売ですから、なによりもお客様を優先するのが当然です。ですから、こちらもレジが混んできたら、「レジ、入ってください」と言うようにしています、気づく限りは。

実際のところ、数年前まではバイトなど書店員も比較的多く、担当の人と話をしていても、レジだとか問い合わせは別にさばく人がいました。ところがこの数年、人員削減のあおりでしょうか、こちらの営業相手の担当の方がレジに入っていたり、サービスカウンターにいたり、ゆっくり話をする時間が取れないことがしばしばです。

ただ、今回はそういうことを愚痴りたいのではありません、問い合わせに答えるのは書店員として当然ですし、時にはこちらの方がうまく答えられるような時もあったりして、そういう時はしゃしゃり出てお客様にお答えすることもあります。(時々、うちの本のこととか、語学書について聞いてくるお客さんがいるものです。)

そんなふうにお客様の質問、疑問に答えるのが書店員の仕事の一つなのですが、たぶん一番多いのは「こういう本ありますか?」というお尋ねだと思います。もちろん、お客様の記憶がうろ覚えで、出版社もタイトルも著者名もほとんどわからない、ただただ「テレビで誰々が言ってた」という、どんな書店員でもお手上げになりそうな質問から、きちんと新聞や雑誌の切り抜き、ウェブページのプリントアウトを持ってきて質問するお客様までさまざまです。

そんなお客様と書店員さんとのやりとりを見ていて最近気になることがあります。それはお客様が出版社や書名をしっかり覚えている場合、店員さんが棚へ案内するのではなく、まずレジやカウンター内のパソコンのキーを叩いて検索していることです。

本を探すのに検索して何が悪い、と言われそうですが、それも一理あります。でも、その一方で、「その本知らないの?」という気もするのです。ワンフロアの大型書店の場合、自分の受け持ちジャンルではない本のことを聞かれたら、すぐにはわからなくてまずは検索するというのは理解できます。でも、小規模の書店の場合、自分のお店に並んでいる本はある程度頭に入っているものではないか、そういうふうにも思うのです。

特にお客様が聞いてくる本というのは、多くの場合、話題になっている本だと思われます。書評に出たとか、テレビで紹介されていたとか、そういう本が多いと思います。だとすれば、たとえ大きな書店で、自分の担当ジャンルではなくとも、その程度の本の名前くらいは頭に入っていて、お店のどこに置いてあるかくらい把握しているものではないでしょうか?

最近も、ある賞を取った本があるか聞いてきたお客様がいて、対応した書店の人は、まずはレジ内のパソコンに向かったのです。その書名、あたしの勤務先の本ではありませんが、賞を取ったくらいですからあたしだって書名は知っていますし、多くの本屋でお店の目立つ場所に積んであるような本です。それくらいはパソコンに頼らなくても店内のどこに置いてあるのか、いま在庫は残っているのか、頭に入れておくべきではないか、そんなふうに思ってしまいました。

その書店の人はバイトのようでしたが、それは営業しているあたしだからわかることであって、お客さんから見たら正社員もアルバイトも契約社員も関係ないですよね? バイトだから本のこと知らなくてもいい、というふうにはなりませんよね? 幸い、そういう本だったのでパソコンで在庫がヒットしたのでしょう。そのバイトさんは、棚番号を確認してその本をお客様に渡していましたし、お客さんも満足そうに買って帰られましたが、なんかすっきりしない気持ちが残ったのはあたしだけでしょうか? 正社員の人でも、まずはパソコンに向かう人が最近は増えていますね。

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