2012年1月18日

東大の入試改革で......

東京大学が入学時期を9月にずらすというニュース

まだまだ本決まりではなく、これから喧々囂々の議論が行なわれるのでしょう。入学試験の時期はどうなるのか、最初の年と次の年の入学資格者はどうなるのか、クリアしないとならない点がかなりあります。ただ、東大だけでなく国公立と有力私学が9月入学に移行すれば、ほぼすべての大学が追随することになるでしょうね。

個人的には、世界の標準だからと言って9月に変える必要性は感じませんし、むしろそういうことだから国際人が育たないのではないかという気もします。制度だけ変えたって意味はないと思うのです。ただ、その一方で、容れ物を変えると、おのずと中身もそれに合わせて変わってくるとも考えられますし、ただ単に世界標準に合わせようというだけでは失敗する気がします。

ところで、東大だけでなく大学がこぞって9月入学に移行した場合、高校など他の学校はどうするのでしょうか? やはり4月→3月のままで行くのか、小学校から一気に9月入学に変わるのか、そういう影響も出てくるのではないでしょうか? もちろん企業の採用活動も変わるでしょうし、単に東大だけの問題には留まらなくなる可能性を秘めていると思います。

とはいっても、仮に実現したとして、既に学生生活を終え、社会人になってしまっているあたしにとって、どれほどの影響があるのでしょうか、と考えてみました。

あたしの勤務先は出版社です。特に大学向けの語学の教科書や一般書店で売る語学参考書を大きな柱としています。このジャンルは、4月から始まって3月に終わるという一年の流れが売り上げにも非常に影響します。教科書は4月に売れます(出荷はもちろんその前ですが)。最近では後期学期の需要も伸びていますが、やはり大部分は4月です。

書店の語学書も、NHKの語学講座が4月開講ですから、やはり大学と同じような売れ方で推移します。もちろんNHKだけでなく、多くの語学学校も4月開講のところが多いです。語学の検定試験もそういう実情に合わせた試験日程を組んでいるはずです。

そして、金銭的に考えると、この売れ方に従って会社の売り上げも上がったり下がったりするというわけです。企業によっては年間のそういう流れに合わせて決算時期を定めているところも多いでしょう。もしこの流れが変わってしまうと、決算にも大きな影響が出るのではないかと思われます。

もちろん語学書だけではありません。夏は文庫の100冊のフェアが大手各社で行なわれます。我々のような中小出版社はそれを避けてフェアの案内をするのですが、入学時期がずれるとなると、書店の現場もそれに合わせた年間スケジュールを組みますから、これまでのような流れでフェアをやってくれるのかどうか、少々心配になります。

たぶん、こう考えていくと、出版社や教育関係の会社はかなりの影響を受けることになるのではないでしょうか? そういう影響まで東大の方々は考えてくれているのか......

個人的には、別れや出会いの季節に桜が咲いているって、日本人の心の琴線に触れるので、3月卒業、4月入学は動かして欲しくないのですが。

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