2011年11月28日

駅の書店

啓文堂書店の新規店が、京王線のつつじヶ丘駅にオープンしました。京王リトナードという商業施設の中にオープンしたわけですが、つまりは駅ナカ書店といった感じです。

駅ナカと言えば、JRの上野駅をはじめ、本当に改札口の中の商業施設もありますが、駅から出ず、雨の日も濡れずに買い物ができるという意味では、こういった商業施設も駅ナカと呼んでもよいのではないかと思います。

こんな立地に書店が出てきてしまうと、やはり駅ソトの書店は大きな打撃を受けることになるのでしょう。つつじヶ丘で言えば駅前の書原でしょうか。新しいお店ができると最初は物珍しさもあってお客も殺到しますが、しばらくすると落ち着き、それなりに使い分けたりするものです。

この商業施設にはスーパーも入っていますが、やはり駅ソトのスーパーは打撃なのでしょうか? ただ、つつじヶ丘に限らず、啓文堂書店に限らず、こういった鉄道系の書店が鉄道の駅ビルに出店するというのは今に始まったことではなく、全国的に行なわれていることです。

そして、そういったお店ができると、駅の外のお店が衰退し閉店に追い込まれるというのも、よくある話です。もちろん衰退せず、負けじと頑張って、ますます成績を上げているお店だって数多くありますが、やはり駅外のお店から見たら「ずるいな」「羨ましいな」と思えるでしょう。

そういった羨望は書店に限らず、他の業種でもあるのではないでしょうか? ただ、例えばパーマ屋さんの場合、駅ナカのお店がパーマとカットを5000円でやるなら、駅ソトの店は4500円でやる、ということも可能でしょう。人件費や諸経費をどうするかという問題はありますが、そういう価格設定はできるはずです。スーパーの場合、品揃えもそうですが食料品の場合、食の安全が問われる昨今、一概に安いだけでは客は来ませんから、鮮度や品質で勝負することもできます。

翻って書店の場合、同じ本ならどこで買っても同じ内容です。カバーがちょっと汚れているといった違いはあるかも知れませんが、中味は同じです。品質勝負なんてできません。そして、価格も同じです。これは再販制度というのがありますから、上に挙げたパーマ屋さんのように、値段を安くするといった手段を書店では選択できません。

そう考えると、駅ナカに競合店ができた場合のハンディって、他の業種と比べると、やはり書店にとっては大きいのかも知れません。

ただ、それでも駅ビルに便利なお店が出店するのは利用者としてはありがたいですし、お互いが競って、質なり品揃えなりがよくなるのは消費者にとってはありがたいことです。これぞまさしく資本主義なのかも知れません。

全国的に、このような私鉄系列の書店が沿線の駅の駅ビルに書店を作っているのはたくさんの事例があるでしょうが、書店に限らず商業ビルを駅に作るのは、やはりJRのルミネが先駆けでしょうか? ルミネ、アトレなどJRはかなり積極的にやってますし、西の方では伊勢丹と組んで駅の再開発をやっています。東北地方では、新幹線駅が同じような状況で、新幹線の通っている駅では駅ビルがきれいになって、お土産屋、食べ物屋などが入っていて、出張をするこちらとしては便利この上ありません。

ただ、その反面、こういう駅では駅の近くや駅からちょっと離れたところにある、古くからの繁華街や商店街が寂れているのも事実です。それこそシャッター商店街です。そして、もっと郊外の街道沿いに大きな大きなイオンとかヨーカ堂が競うように作られています。

つつじヶ丘駅の様子は、そういう日本の最近の縮図に見えます。

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