2011年11月26日

ノンフィクションと専門書

そろそろ年の瀬も見えてきて、忘年会の予定やら、新年会の予定など、いかにも師走といった話題が出てくるようになりました。今年一年は、まあ、震災はおくとしても、やはり出版界は厳しい一年だったと思います。本が売れない、というのがどのジャンルにも言えるような気がします。

そんな中、比較的検討したと言えるのが、あたしの勤務先で言えば、近現代史ものです。ほとんどが上下本という巨冊でありながら、それなりに売れましたし、書評でもよく取り上げていただきました。重版になったのも過半を占めます。



ところで、これらの書籍ですが、書店によって置かれている場所が異なります。

こちらとしては人文コーナーの歴史の棚に置かれるのが一番よいかなと思っていますし、第二次大戦以後のものなら社会コーナーの海外事情・国際情勢の棚かなと考えます。でも、書店によってはこれらを海外ノンフィクションのコーナーに置いているお店も多いのです。

海外ノンフィクションのコーナーが、書店の中でどこにあるかというのも書店によってさまざまですが、比較的多いのが文芸書コーナーの中です。日本の作家、海外の作家、詩歌、評論などが並んでいる一角にノンフィクションのコーナーがあり、その中の海外ノンフィクションに置かれているのです。

人文書と文芸書では、書店の中の場所も異なりますが、そこへ来るお客さんの層やタイプもかなり違ってきます。どちらの方がこういった本を買ってくれるお客様なのか、にわかにはわかりかねますし、もうその書店の本の並べ方に慣れてしまっているお客さんにとってはあまりこだわる必要のないことなのかも知れません。

でも、こちらとしては書店でどの担当の人に案内するか、販促するかが違ってきますから、多少はこだわる必要が生じます。こちらとしては、かなり重厚な本であり、歴史好き、歴史マニアにも十分読み応えのある本であり、大学教授などの専門家にも自信をもってお薦めできる本だと考えていますから、人文書コーナーの方がふさわしいのではないかと思います。それに文芸書コーナーよりは人文書コーナーの方が置いてある本の平均単価が高いですから、これらの本が置かれていても極端に高い本という印象は与えずにすみます。でも、これが文芸書では上下本の巨冊はちょっとしんどいと思われてしまう可能性が高いと思います。

別にあたしは、人文書売り場へ来るお客の方が金持ちで高級だと言いたいのではありません。一般的に人文書売り場の邦画より専門性が高く、単価も高い本が多いと言っているだけです。ですから、人文書などは、業界では一般書に対して専門書と呼ばれたりもします。特に読者を選ばない、誰にでも読んでもらえる一般的な書籍に対し、ある程度専門的な知識を必要とする専門的な書籍という分け方です。

そう言ってしまえば、あたしの勤務先が出してきた本たちは、まるっきりその時代や国に興味のない人には読むのが辛いでしょうが、ごくごく一般的な歴史好きであれば十分に楽しく読める本ですから、専門書というよりは一般書なのかも知れません。そして、文芸書コーナーの一角にあるノンフィクションの棚に置かれてしかるべきなのでしょう。

書店員さんも、歴史家や研究者などが書いた研究書は人文コーナーに置き、そうでないものはノンフィクションコーナーに置いていると言う方も大勢いらっしゃいます。つまりは、そのお店の担当の方の好みとセンス、あとはそのお店を利用するお客様の傾向なのだと思いますが......

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