2011年11月23日

「タニタの社員食堂」的な......

体脂肪計タニタの社員食堂』『続・体脂肪計タニタの社員食堂』が売れています。

世にレシピ本は星の数ほどありますが、この本がこれだけ売れたのは、そこに健康・ダイエットという要素が加わっているからだと思います。あと、体脂肪計を作っている会社の社員食堂であるというイメージも、健康とダイエットに対して保証を与えているのではないでしょうか?

失礼ながら、タニタという社名、本書が売れるまではそれほど全国区の名前ではなかったと思います。もちろん知っている方も大勢いたでしょうけど、街角でインタビューをしたらほとんど人が知っていると言うほどの有名企業で会ったかと言われると、難しいところです。

それでも、なんとなく体脂肪計を作っている健康企業、どっかで聞き覚えのある名前だなくらいの知名度はあったのかも知れません。どこの馬の骨ともわからない人が、「このレシピなら痩せられる」と謳っても、ここまでのヒットになったかどうか、やはりタニタの社員食堂のレシピ本というのがこの本のウリであり、ミソでしょう。

それにしても、あたしの勤務先ではこういったジャンルの本を出していないのでわかりませんが、このジャンル、この本に限らず、オールカラーの安い本が多いですよね。単純に原価計算をしてしまうと、万単位で製作しないと元が取れるとは思えません。

地味な本が多いあたしの勤務先の感覚からすると、天文学的な数字の発行部数です。どこの書店に行っても積んである、並んでいる状況を見ると、かつてのサンデルやミシュランを思い出します。そして、それを思い出すと同時に、「あれだけ積んであると、天文学的売り上げなんだろうけど、返品も天文学的数字になるだろうなあ」という不安が頭をよぎります。

返品されても、この後もポツリポツリと売れる本であればよいのですが、これだけ売れる本というのは多くの場合ブームは一過性で、ブームが過ぎると全く売れなくなるものです。つまり返品はすべて赤字のもと。

となると、相当数売れても相当数の赤字が出てしまいますから、実は利益はそれほどでもないのではないか、という気もします。10万部売れても5万部返品されたらどうなのでしょう? こういう天文学的数字になると、まったく予想もつきません。

とりあえず、この本の場合、広告などでは450万部と言ってますから、多少の返品があっても赤字になることはなく、版元も十分潤っていることでしょう。

ところで、タニタのレシピ本だから売れたという、いわゆる世間の空気と言いますか、評価を巧みに利用した本書、やはり強いです。で、思うのはあたしの勤務先です。

世間では、と言うか、業界ではあたしの勤務先に対して、「社員は全員英語とフランス語はペラペラ、その他にもう一か国語できるのがふつう」というまことしやかな説が流れています。実のところ、そんなことは全くなく、日本語すら怪しい編集者もいるくらいなんですが、とにかくそう思っている人が多いようです。

ならば、それを逆手にとって、「白水社の社内講座の語学テキスト」なんていう触れ込みで語学書を出版したら、かなり売れるのではないでしょうか? ダメですかね?

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