2011年11月12日

幸福の行方

お陰様で、Uブックスの『幸福論』がよく売れています。

いや、売れているという言い方は正確ではないかもしれません。だって、今回の動きが出るまで、書店店頭で激しく売れていたというわけではなく、従って書店の店頭にも一冊置いてあれば御の字という状況だったからです。

一冊置いてあった本が売れたからといって「売れている」という表現は大袈裟でしょう。ただ店頭でそれなりに注文や問い合わせはあるようなので、たまたま複数冊持っていた書店などでは、すべて売れてしまっているところもあるようですが、それは全国でも十数軒程度のお店の話でしょう。

より正確に言うのであれば、よく「売れている」ではなく、「注文が来ている」ということです。まあ、注文が来ているということは、書店でもそれなりに売れるだろうという判断が働いているのでしょうし、現に直接の売り上げ(注文)が反映されるアマゾンでも順位を上げています。結局はお客様が買ってくれるわけであるなら、注文が増えているということは売れているということに、限りなくイコールになるでしょう。

ところで、あたしの勤務先が出しているUブックス版は、Uブックスというシリーズが、多くの書店では文芸書コーナーに置かれています。たいていは海外文学の隅っこの方です。その次は文庫・新書のコーナーに、文庫クセジュと並んで置いてあるパターンです。

さて、今回の『幸福論』ですが、文芸書という捉え方も出来ますが、まあ妥当なところでは哲学・思想書だと思います。でもUブックスを哲学・思想書コーナーにも置いている書店は少ないです。数えるほどです。

それに今回のようにテレビ発のブーム(?)の場合、人文書コーナーで展開しても売れるのでしょうか? むしろレジのそば、入り口の近くなどの目立つところで展開した方が目にもつきますし売れるのではないでしょうか? そういう心配もあります。

また、Uブックスは上述の通りですが、他社からも「幸福論」は出ていまして、代表的なところでは集英社文庫と岩波文庫です。これらはどちらもまず間違いなく文庫コーナーにありますよね。あとはDiscover21の単行本。これは単行本ですから人文書コーナーに置いてある書店もあるかと思いますが、でもDiscover21ですから、自己啓発本コーナーかもしれません。さらには、本家本元、NHKが番組テキストを出していますよね。



こんな風に、ふだんはいろんなジャンル、コーナーに分かれて置かれている本が、何かのきっかけで注目を浴びると,書店の方でもどのコーナーで展開するか知恵を絞ることになるでしょうし、出版社側もどのジャンルの担当の人に案内するかで悩むことになります。

でも、お客さんの側からすると、ただ単純にアランの『幸福論』を買いに来たのに、本屋のあっちにもこっちにも置かれているなんて不便きわまりないことではないでしょうか? 現在の書店の宿痾ですね。

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