2011年11月 3日

100万部!

スティーブ・ジョブズの評伝が1巻、2巻合わせて100万部を突破したそうです。でも、記事をよーく読んでみると「発行部数100万部」とあって、実売とは異なるようです。

確かに書店営業をしていますと、首都圏の大書店では店頭の一等地に山積みになっていて、お客さんも手に取って眺めている光景を見かけます。でもお客さんがレジに並ぶとか、次から次へと手に取っていくという光景はまだ目にしておりません。

営業時にまさしく飛ぶように売れたのを見たのは、ミシュラン日本版の最初の時だけです。あの時はレジに列が出来ていて、そのほとんどの人が手に赤いあの本を持っていました。それに比べるとジョブズの評伝、それなりに売れているのでしょうけど、こういうニュースになるほどの売れ方なのかと思います。

別の記事では村上春樹の『1Q84』の時よりも100万部に達したのが数日早いと書いてありましたが、それでも『1Q84』の時の方が目に見えて売れている感じがありましたけど、さてジョブズ伝、この後どうなるのでしょうか?

また「地方の小書店などに行き渡らない状況が続いている」とも書いてありますが、これは現在の出版界の宿痾ですね。大都市の大書店の店頭にドカンと積んで話題作りをしないとならない反面、大都市でも小さい書店、地方の書店には本が回らないという問題。

もちろん実際に売れる冊数が桁違いなわけですから出版社としても大都市の大書店に多く積んでもらいたいという思いはあります。それにそういう書店で売れていると全国的な波及効果も期待できますから。ただ、そうやって積んでみても果たしていつまでブームが続くのかという懸念は出版社も書店もどちらも抱えているようです。本音を言えば、都市部の大書店に積んでいる本を少し返品してもらって、それを地方の書店に振り向ければ無駄な重版をしないでも済む、つまりは余剰在庫を抱えなくて済む、と思っているはずなのですが......

なんとなく、マイケル・サンデルの本がブームになったときのことを思い出します。あれも全国津津浦浦、それこそ「こんな小さな書店でもレジ前で積んでいるよ」という状況でした。あれが全部売れたとはとても思えません。数十万部規模で売れた反面、数万部規模で売れなかった本があったのではないでしょうか?

今回もそうなのかもしれませんが、あれだけ売れれば、数万部の返品が起きても十分採算はとれるのでしょうけど、中途半端な売れ方で終わってしまうと返品のせいで利益はすべて飛んでしまいますよね。恐ろしいことです。

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