棚が作れない?
先週後半に行ってきた、ヤングアダルト出版会の研修旅行。研修旅行の報告は各担当の人がとりまとめてくれているのでしょうから、ここではあたしなりの感想を綴ります。
書店の方からいろいろな意見が出されましたが、あたしが感じたのは、原状では、ヤングアダルトというコーナーなり書棚なりを作ることは書店にとってメリットがない、売り上げに繋がっていないということです。
例えば、書店の棚はジャンルごとに分けられています。人文や文芸、芸術といった具合に。ところが、ヤングアダルトというのは、確かにジャンルという見方もできますが、やはりジャンルと言うよりは世代のことになり、そもそも書店の棚の構成とマッチングしづらいわけです。
そして、そもそもが特定の世代に向けたものですから、ヤングアダルト出版会が提案する書籍にしろフェアにしろ、文芸あり実用ありというふうに、内容が多ジャンルに渉っています。書店側からすれば、ヤングアダルトという常設の棚がない以上、どこかのコーナーの近くに並べるわけですが、しっくりくる場所がない、というわけです。(フェアはすべてフェア台でやる、という書店は別でしょうが......)
結局、多くの書店が児童書の隅っこにヤングアダルトコーナーらしき棚を置いているところが大部分で、フェアも児童書コーナーでやっていることが多いのですが、児童書って極端に言ってしまうと、赤ちゃん向け、幼児向けの絵本などが主流です。ここに中高生向けの本を置いても果たして効果があるのか?
ある書店員さんが言ってました。ヤングアダルトは児童書に置くことも文芸書に置くこともできるけれど、実際に両方に置いてみて、児童書のコーナーでは児童書に近いものが売れた。しかし文芸書のコーナーではさっぱりだった。となると、ヤングアダルトの中のやや大人向け(高校生向け)のものは諦めて、児童書コーナーで児童でも読めそうな本を売るのが、書店としては合理的な判断になると。
つまり、これも書店員さんからの指摘ですが、ヤングアダルトはティーンエイジャーと言い換えてもいいけれど、つまりは中高生向け、13歳から19歳向けの本のこと。その括り方に既に無理があるのではないか、ということです。考えてみれば、もう大人と言ってもいいような高校3年生と、ついこの間までランドセルを背負っていた中学1年生とを同じ括りで扱うことに無理があるのは誰にだってわかります。
ただし、書店員さんも、この世代の子供にしっかり本を読むような習慣をつけてもらいたい、本に親しんでもらいたい、そうすれば大人になっても本を読むような人になる、本屋へ来てくれるようになると思っていて、ヤングアダルト出版会の活動の趣旨には賛成してくれているようです。
そんな中、ある書店員さんが、高校生ならもう自分で本を選べるし、大人向けの本で十分だろう、やはり中学生向けに絞った方がよいのではないか、という趣旨の意見を述べられました。あたしもいくつかの意見、提言を聞いていて、「中高生向け」という看板を下ろさなくてもいいけれど、メインターゲットを「中学生向け」にした方がよいのかな、と感じました。しかし、これは会の存続に関わる大きな問題です。「はい、そうですね」と簡単に言える問題ではないですね。
ただ、今回の研修旅行を経て、こうも感じました。ヤングアダルトというのはアメリカで生まれた言葉、概念です。アメリカでは図書館でも書店でも定着している言葉のようです。紀伊國屋書店でも、洋書コーナーには「Young Adult」というコーナーなり棚なりがきちんとあります。しかし、ヤングアダルト出版会が発足して30年、いまだに多くのどころかほとんど書店ではヤングアダルトというコーナーはありません。
つまり、アメリカのものをそのまま日本に持ってきても、国情や文化などさまざまな条件が違うわけですから、日本に根付くわけはないのではないか、ということです。出版の分野に限らず、アメリカでこれだけ流行しているんだから日本でもきっと流行るはずと思って取り入れたけど全く成功しなかったという事例はたくさんあります(もちろん、成功事例もたくさんありますが)。ヤングアダルトというのも、その一つではないかな、と漠然と思うのです。
でも、大人になっても本を読むような習慣を育てたい、という趣旨は間違っていないわけですから、ヤングアダルトというアメリカ生まれの言葉に引きずられずに、改めて日本に合った「ヤングアダルト」を考えるべきなのかも知れません。
ただ、一つ試みて欲しいなあと思うのは、ヤングアダルトコーナーを中高生向けの学参コーナーのところに作ってみたらどうでしょう。ジャンル別ではなく世代別のコーナーという意味では学参はまさにヤングアダルトと同じです。そして、中高生向けという点でもピッタリ一致します。また学参コーナーに来る子供は、それなりに本に対する関心も高いでしょうし、本屋で本を買うという習慣もあると思います。ヤングアダルトコーナーを作るのにぴったりの場所ではないでしょうか? その隣や近くにはケータイ小説やライトノベルを置き、さらにその先がコミックコーナーでも構いません。とにかく、中高生向けの本は、遊びの本から勉強の本まですべてこの一郭に揃っていますよ、という場所があってもいいのではないでしょうか。
まだまだ、試せること、努力すべきことは多そうです。
書店の方からいろいろな意見が出されましたが、あたしが感じたのは、原状では、ヤングアダルトというコーナーなり書棚なりを作ることは書店にとってメリットがない、売り上げに繋がっていないということです。
例えば、書店の棚はジャンルごとに分けられています。人文や文芸、芸術といった具合に。ところが、ヤングアダルトというのは、確かにジャンルという見方もできますが、やはりジャンルと言うよりは世代のことになり、そもそも書店の棚の構成とマッチングしづらいわけです。
そして、そもそもが特定の世代に向けたものですから、ヤングアダルト出版会が提案する書籍にしろフェアにしろ、文芸あり実用ありというふうに、内容が多ジャンルに渉っています。書店側からすれば、ヤングアダルトという常設の棚がない以上、どこかのコーナーの近くに並べるわけですが、しっくりくる場所がない、というわけです。(フェアはすべてフェア台でやる、という書店は別でしょうが......)
結局、多くの書店が児童書の隅っこにヤングアダルトコーナーらしき棚を置いているところが大部分で、フェアも児童書コーナーでやっていることが多いのですが、児童書って極端に言ってしまうと、赤ちゃん向け、幼児向けの絵本などが主流です。ここに中高生向けの本を置いても果たして効果があるのか?
ある書店員さんが言ってました。ヤングアダルトは児童書に置くことも文芸書に置くこともできるけれど、実際に両方に置いてみて、児童書のコーナーでは児童書に近いものが売れた。しかし文芸書のコーナーではさっぱりだった。となると、ヤングアダルトの中のやや大人向け(高校生向け)のものは諦めて、児童書コーナーで児童でも読めそうな本を売るのが、書店としては合理的な判断になると。
つまり、これも書店員さんからの指摘ですが、ヤングアダルトはティーンエイジャーと言い換えてもいいけれど、つまりは中高生向け、13歳から19歳向けの本のこと。その括り方に既に無理があるのではないか、ということです。考えてみれば、もう大人と言ってもいいような高校3年生と、ついこの間までランドセルを背負っていた中学1年生とを同じ括りで扱うことに無理があるのは誰にだってわかります。
ただし、書店員さんも、この世代の子供にしっかり本を読むような習慣をつけてもらいたい、本に親しんでもらいたい、そうすれば大人になっても本を読むような人になる、本屋へ来てくれるようになると思っていて、ヤングアダルト出版会の活動の趣旨には賛成してくれているようです。
そんな中、ある書店員さんが、高校生ならもう自分で本を選べるし、大人向けの本で十分だろう、やはり中学生向けに絞った方がよいのではないか、という趣旨の意見を述べられました。あたしもいくつかの意見、提言を聞いていて、「中高生向け」という看板を下ろさなくてもいいけれど、メインターゲットを「中学生向け」にした方がよいのかな、と感じました。しかし、これは会の存続に関わる大きな問題です。「はい、そうですね」と簡単に言える問題ではないですね。
ただ、今回の研修旅行を経て、こうも感じました。ヤングアダルトというのはアメリカで生まれた言葉、概念です。アメリカでは図書館でも書店でも定着している言葉のようです。紀伊國屋書店でも、洋書コーナーには「Young Adult」というコーナーなり棚なりがきちんとあります。しかし、ヤングアダルト出版会が発足して30年、いまだに多くのどころかほとんど書店ではヤングアダルトというコーナーはありません。
つまり、アメリカのものをそのまま日本に持ってきても、国情や文化などさまざまな条件が違うわけですから、日本に根付くわけはないのではないか、ということです。出版の分野に限らず、アメリカでこれだけ流行しているんだから日本でもきっと流行るはずと思って取り入れたけど全く成功しなかったという事例はたくさんあります(もちろん、成功事例もたくさんありますが)。ヤングアダルトというのも、その一つではないかな、と漠然と思うのです。
でも、大人になっても本を読むような習慣を育てたい、という趣旨は間違っていないわけですから、ヤングアダルトというアメリカ生まれの言葉に引きずられずに、改めて日本に合った「ヤングアダルト」を考えるべきなのかも知れません。
ただ、一つ試みて欲しいなあと思うのは、ヤングアダルトコーナーを中高生向けの学参コーナーのところに作ってみたらどうでしょう。ジャンル別ではなく世代別のコーナーという意味では学参はまさにヤングアダルトと同じです。そして、中高生向けという点でもピッタリ一致します。また学参コーナーに来る子供は、それなりに本に対する関心も高いでしょうし、本屋で本を買うという習慣もあると思います。ヤングアダルトコーナーを作るのにぴったりの場所ではないでしょうか? その隣や近くにはケータイ小説やライトノベルを置き、さらにその先がコミックコーナーでも構いません。とにかく、中高生向けの本は、遊びの本から勉強の本まですべてこの一郭に揃っていますよ、という場所があってもいいのではないでしょうか。
まだまだ、試せること、努力すべきことは多そうです。
読んだ感想を書く