2011年8月14日

風前の灯火?

あたしの勤務先は、いろいろなジャンルの本を出していますが、それらの柱となるジャンルに語学書があるのは誰しも異論のないところです。何語が主力なのか、売れているのか、という話はひとまずおき、あたしがいまもっとも気になっているのは付属の音源のことです。

語学書ですから発音を聞きたいというのは学習者の常です。むかーし、昔はソノシートなんていうレコードもどきみたいなものが付属している時代もありました。レコードよりは薄くて割れにくそうで、語学書に付属させるにはうってつけだったのかも知れません。

その後、オープンリールを使っていたことがあったような、なかったような時代を経て、あたしが学生の頃はカセットテープが全盛でした。ただ、あの形状から、付属といっても基本は別売りで、意外と高かったという記憶があります。それでも必要があれば買いましたし、図書館でカセットの貸し出しもやっているところでは、借りだしてダビングをしたりしていたものです。

時々、カセットブックといって、初めからカセットテープが本と一緒になったパッケージのものも売られていましたが、それが主流になることはありませんでした。音源を聞く媒体としてはカセットの後にMDが発売されましたが、語学書の別売り音源としては全く定着しませんでした。そして現時点ではCDが主流です。

このCDも、初めは別売りのカセットと置き換わるように、別売りのCDでした。しかし、カセットとは異なり、薄っぺらなCDですから、これが書籍に貼り付けられるようになるのに時間はかかりませんでした。そして、現在の主流であるCD付語学書に行き着くわけです。

ところで、例えば2000円程度の本に、CDが別売りだとその別売りはCDは2500円くらいします。と言いますか、最初のころはそんな値段のものが多かったです。ところが、本にCDが付属するようになると、これが2200円程度になってしまいました。これまでだと、本とCDとで5000円弱もの出費を強いられていた学習者にとっては半額以下になる僥倖です。つまり、裏を返せば,別売りという販売方法でどれくらい出版社が設けていたか、ということです。

もちろん、別売りにすればパッケージ代のほかに、本とは別の商品ですから別個の在庫管理も必要になりますので、そう単純にボロ儲けというわけではないのですが、それでもCDのディスク時代の原価に差はありませんから、かなりの利益だったはずです。

最近では、「実はCDはあまり使われていない」「本当に必要な人は多少高くても買う」「CD付でない方が持ち歩きにも便利」などの理由で、CDをあえて別売りにする商品も復活していますが、中上級の読み物や作文、文法専門のものを除けば、CDは付属しているのが当たり前の状態です。

さて、そんな中、あたしの勤務先の語学書には、比較的多くの商品でミニCDを利用しているものがあります。ミニCDという名称ではわからないでしょうか? シングルCDというのでしょうか、それとも8センチCDと言った方がわかるでしょうか? とにかくやや小ぶりのものです。

これの利点は、新書版やポケット版など判型の小さな本にもCDを付属できるというところです。もちろん小さいので、通常のCDのように80分近い長さを入れることはできません。せいぜいが10分程度でしょう。

このミニCD、実は最近、問題が多発しているのです。

どういうことかと言いますと、専用のCDプレーヤーならまだ対応できる機種が多いのですが、パソコンなどのCDプレーヤーですと、ミニCDを聞けないものが多いのです。この「聞けない」というのはソフトの問題とか相性の問題ではなく、ミニCDという形状から来る物理的な問題なのです。「せっかく買ったのに自分のプレーヤーでは聞けない」という電話やクレームが時々あります。

形状の問題ですから、本来「買う前に見えればわかるでしょ」というレベルの話なのですが、語学の勉強をしている人が,必ずしもそういう機械に強い人とばかりは限りません。それに、こういうご時世、ミニCDという音源提供方法が,読者サービスとして正しいのかどうか、それは出版社として考えないといけないことだと思います。

ここで、ミニCDはやめて、すべて通常のCDにしよう、というのも一案ですが、これすら昨今のユーザーの利用という視点から正しいのかどうか、と思います。もう音源はすべてウェブサイトからのダウンロードに一本化して、書籍にCDなどを付属するのはやめるべきなのではないか、あたしなどはそこまで考えています。そして、その場合のウェブサイトというのも、パソコン版ではなく、ケータイ版のサイトの方が、今どきの若い人には便利なんじゃないだろうか、という風にも思っています。

このあたり、若い人と接する機会が極端に減っているので、実のところどうなのでしょう? iPodなどはやはりパソコンがないと取り込めないんでしたっけ?

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