2011年8月10日

拡材の行方

拡材とは拡販材料のこと。ポップやのぼり、ポスターなどのことです。業種によってどんな拡材を使うかは異なりますが、出版業の場合、書店店頭で使われるのは上記が主たるものです。

拡材は出版社が用意するものと、書店が独自に作るものがあります。中には出版社からデータをもらって書店側がアレンジすることもあります。昨今、読者に対する訴求力、つまりアピールで強みを発揮しているのは書店員の手書きポップのようです。書店員でなくとも、担当編集者だったり著者だったりの手書きでもそれなりの効果があるようです。

手書きというところに、きちんとその本を読んで、感想などを人々に伝えたいという真心が感じられるのでしょうか・ 少なくともパソコンで機械的に作ったものよりは反応がよいみたいです。もちろんパソコンにだって手書き風フォントはありますし、汚い字ではそもそも読む気も起きませんから、手書きだからよいというわけでもありません。このあたりは手紙と同じ心理でしょうか?

さて、こういったポップなりチラシなり、書店員さんは忙しいですから、出版社側が用意して書店で使ってもらうというのが多いと思います。出版社としてはなんとかその本に関心を持ってもらいたい、手にとってもらいたいと考え、そういった拡材を用意するわけですから。

で、あたし、ふと思ったのです。

この拡材、どういうお店に持っていくべきなのだろうか、と。

書店の中にはポップは一切使いません、というところもあります。そういうお店はまず除外しますが、多くの書店で何を基準にポップを提供するかです。

大手出版社なら、売れそうな作家の本には、最初のときにポップやミニ看板を数枚同封して出荷しているのかもしれません。でも、たいていの出版社はそうではないでしょう。本が出た後に「ポップでも作って、少し販促に努めるか」という段取りだと思います。

そして出来上がったポップ、どうやって書店を選んで送っているのでしょうか? 売り上げの上位の書店からでしょうか? それとも仲良しの書店員さんがいるお店からでしょうか? 積極的にポップを使ってくれるお店でしょうか? うん、これは肝心ですね。せっかく送っても使ってくれないお店だって多いでしょうから。

もちろん使わないのにはそれなりに理由があって、ポップの大きさが書棚と合わないとか、センスの悪いポップだから使いたくないとか(爆)、それはまあ、出版社側も織り込み済みです。

で、話しは戻って、どこへ送るかです。

何が言いたいのかといいますと、売れてるお店に持っていくべきなのか、売れていないお店に持っていくべきなのか。

販売拡大のための材料ですから、売れていないお店へのてこ入れとして使うべきなのでは、という考え方もあれば、いや売れている店でさらなる増売を計るために使うべきだという意見もあるでしょう。こう言っては全国の書店員さんに失礼ですが、やはり新宿の紀伊国屋とか丸の内の丸善、池袋のジュンク堂などで売行きがよいと書店員や出版社営業の間でも話題になって、それが更に売れる空気を作っていくことがあります。主力店で更に売る、昨今の出版界の流れです。

となると、拡材はそういった主要店に持っていって使ってもらうのがよいことになります。確かに、そういうお店なら該当の本も10冊や20冊は置いてくれていて、ポップを使って宣伝するスペースもあるでしょう。その逆に小さい書店で1冊しか置いていないようなお店では、その1冊のためにポップを使うなんて出来ない相談です。

もちろん、「売れているの? じゃあ、うちもポップを使って少し積んでみようか」という話になり、その結果売れたということだってあるでしょうし、そういう地道な掘り起こしも出版社の営業にとっては大事ではないかと思うのです。

じゃあ、やれば、と言われても、やらない理由はいくつでも挙げられます。理由というか言い訳、屁理屈と言った方がよいでしょう。主要店だって売れる冊数には限りがあり、それ以上に伸ばすには主要店以外での売り上げをどれだけ積み上げることが出来るかにかかっている、それは重々承知しています。

でもね・・・・・・

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