2011年7月27日

無記入の意味

本は再販制だとか、委託販売制だとか、業界外の人にはちょっとわかりにくい商慣行があります。新刊にしても、書店がこれだけ欲しいと希望を出せる出版社もあれば、何冊入荷するかは来てみないとわからない出版社もあります。

あたしの勤務先の場合は前者で、毎月全国の主な書店にこのようなDMを送り、そこに希望冊数を入れて送り返してもらう方法を採っています。基本的には書店が記入した冊数どおりに配本するのですが、前評判が高く、あまりにも希望冊数が大量に集まってしまった場合には、ある程度の減数処理をします。

さて、上でリンクを貼っておいた、希望数を書き入れてもらう用紙、これをあたしたちは指定書と呼んでいますが、こちらから送って一週間から二週間くらいすると、DMやファクスで書店から送り返されてきます。こちらはそれをとりまとめて新刊を配本するのです。

ところで、この指定書ですが、どの書店もすべての本に希望冊数を記入してくるわけではありません。空欄の書籍がままあります。で、ここで悩んでしまうのです。

記入されていない本は、配本が不要なのか、それとも出版社や取次のパターン配本に任せます、という意味なのか。これがわからないことが多いです。

もちろんよく知っている書店の場合、「ああ、このジャンルの本は、あのお店は置かないな」とか、「これは値段が高すぎるから要らないんだな」と理解できることもありますが、こちらもすべての書店の状況を把握しているわけではありません。

中には数字ではなく、「パターン」と書いてある時もあり、これだと「ああ、パターンに従った配本数でいいんだな」とわかります。またしっかりと「0」と記入してある場合もあり、これも「この本は要らないから、決して配本してくれるな」という意味なのがわかります。

このようにしっかりと意思表示をしてくれればよいのですが、何点かの書籍にだけ数字が入っていて、後は空欄になっている場合、果たして配本が必要なのか不必要なのか迷います。悩みはしませんが、迷います。

「だったら、書店に電話して聞けばいいじゃない」と言われそうですが、こちらも忙しい身です。送られてきた指定書に空欄があるたびに書店に電話をして確認している暇はありません。それに、電話をしたときに、数字を記入した人がお店に出勤しているとは限りませんから、かなり時間を取られる仕事になります。申し訳ないですが、原状ではそこまでの労力をかけている余裕はありません。

「で、結局はどうしているの?」

ということですが、実はケースバイケースです。0冊と見なすこともあれば、パターン配本にすることもあります。

書店側からすれば、たぶん「何も記入しなくても入ってくるだろう、でも、もしかしたら入ってこないかも知れない。他の本はともかく、この本だけは必ず入荷して欲しい。だから、それだけは漏れないように指定書に数を記入して送っておこう」と考えているのではないでしょうか?

「とにかく数を書き入れた本だけは必ず取り寄せたい、それ以外の本は入ってきてもよし、入ってこなくても、まあよし」というスタンスの書店さんが多いのではないかなと推察しているのですが、果たしてこれで合っているのでしょうか? 書店員の皆さま!

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