2011年7月21日

どうした、チャン・イーモウ!

中国を代表する映画監督、張芸謀の最新作(?)、「サンザシの樹の下で」を観ました。

文革時代の若い男女のピュアな恋、その純粋すぎて切なくも哀しいストーリー、と書いてしまえば、とてもきれいなお話なんですが、確かにストーリーは若いカップルで見に行ったら楽しめるのかも知れませんが、文革時代の重さを理解できますかね、日本人が。

こう言ってはいけないのかもしれませんが、チャン・イーモウってこの程度の監督だった(?)という気がしてしまいます。確かに「ヒーロー」とか「LOVERS」とか金ばかりかけた駄作だったかも知れませんが・・・・・・

とにかく、あたしからすると時代を描き切れていない気がしてしまうのです。だから、主役二人の一途で爽やかで、切なくてまっすぐな恋路が、すんなりと心に伝わってきません。なんで母親があんなに反対するのかということも、中国現代史を知らないと理解できないのではないでしょうか? また母親の反対、と言ってもそれほど強烈なものではないのですが、それ以外に二人の恋路を邪魔するものはないですから、結ばれないもどかしさが描かれているわけではありません。

もう少し、二人が引かれ逢っていくところをじっくりと描いてもよかったのではないか、とも思いますし、逢いたくても逢えないという状況をもっと過酷に描いてもよかったのではないかという気がしました。その一方で、いかにも芸術的にきれいな映像を撮っているだろう的なシーンが散見され、却って鼻についてしまいます。

しかし、そんなことよりもなによりも、主役の周冬雨の可愛らしがすべてを帳消しにしてくれます。彼女のピュアで汚れのない表情、仕草、存在、そんなすべてがこの映画の最大の魅力であり、観るべきポイントでしょう。寂しげで、はかなげで、それでいて芯の強さも併せ持つような、そして何より、あの華奢な感じがたまりません。

観ていて、ドラマ「白線流し」の酒井美紀に似ているな、とちょっぴり思いましたが、それにしても「初恋の来た道」のチャン・ツィイーといい、こういう女の子を見つけてくることにかけては、チャン・イーモウはすばらしい才能を持っています。そして、こういう女の子にお下げ髪をさせるのも大好きみたいですね。

映画自体としては、あたしには物足りなかったのですが、周冬雨のかわいさを堪能するだけでも十分元は取れると思います。が、あたしは不覚にも最後のシーンで涙してしまいました。かつて「再見~ツァイツェン、また逢う日まで」では試写会で台号泣してしまったのですが、そこまでの涙ではなかったです。

読んだ感想を書く